◆第41回
ブリーダーズカップクラシック・G1(現地時間11月2日、米国
デルマー競馬場・ダート2000メートル)
壁が高いこそ、闘争心がわき出てくる。矢作調教師がダートの最高峰へ、
フォーエバーヤング(牡3歳、栗東・
矢作芳人厩舎、父
リアルスティール)を送り出す。「アメリカとしても、どうしてもその牙城を守りたいだろうからね。それを打ち破るようなことに快感を覚える人間なので燃えています」。大舞台を見据える視線は輝きに満ちている。
ダートの本場、アメリカへの遠征は2度目。春の
ケンタッキーダービーはドバイからの輸送で着地検疫などを含めると2日以上を要し、本調子まで上げられない中で鼻、鼻差の3着だった。「正直、1週前にはやめようかというほどダメージがあった。その中であれだけ走れているということは適性がないとは言えないですよね」。惜敗の中にも見いだした確かな光。前回とは違う手応えがある。
思い出の場所に戻ってくる。
マルシュロレーヌが21年のBCディスタフで日本調教馬として、米ダートG1初制覇を果たしてから3年。同じ
デルマーーに、あの時以来の競馬祭典への参戦となる。「ダートでの勝利は俺にとってというより、日本の競馬にとって大きかったんじゃないかな。あれがあるからこそ、今回も行く馬がこれだけいると思う」。その指摘通り、今回は日本馬19頭中12頭がダートへの参戦だ。そして、19頭という大攻勢が海外で互いに助け合える「チームJAPAN」の大切さを、今まで訴えてきたトレーナーには頼もしい。「間違いなくプラス。当然です」と力強く言い切る。
フォーエバーヤングのオーナーは
シンエンペラーと同じ藤田晋氏。現場の意見を尊重しながら、世界への挑戦を温かく後押ししてくれる。失意の中にあった
凱旋門賞のレース直後も「オーナーに恩返しをしたい」という言葉が自然と口を突いた。「忙しいスケジュールを調整してきてくれて、海外で負けると、すごい疲れると思うんだよ、帰りが。だから、1回ぐらい楽しい帰り道になって欲しいな」。恩返しできるチャンスはもうすぐやって来る。
まだ良化途上ながらも完勝した
ジャパンダートクラシックを使い、状態は確実に上向いている。現地に到着後も予定通り、乗り出しを開始した。「まだ3歳ですし、来年以降も伸びしろもある中、どれだけ戦えるかというのはあくまで
チャレンジャー。ただ、春とは明らかに違う、いい状態で出せる。そういう点では自信を持っていけると思います」。世界のYAHAGIが、再び日本競馬の歴史に名を刻む。(山本 武志)
スポーツ報知