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業界未経験から厩務員へ「やりがい」感じる日々

スポニチ
  • 2024年10月30日(水) 05時05分
 日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は栗東取材班の田村達人(31)が担当。中央とは違い、地方の厩務員はJRA競馬学校のような特定の学校に通う必要はない。今年4月から業界未経験で園田競馬の松浦聡厩舎に加わった大内紗南厩務員(25)に生い立ちを聞いた。

 中央や地方を問わず、通算2000勝以上の騎手を対象にした招待競走「第31回ゴールデンジョッキーC」が先月19日に園田競馬場で開催され、JRA所属の武豊が昨年に続く連覇を達成した。ポイント3位で迎えた最終戦を1番人気コンドリュール(セン4=松浦聡)で差し切りを決め、見事な逆転優勝。今年もレジェンドが話題をさらった。

 検量室前、担当馬と武豊を満面の笑みで迎えた大内紗南厩務員は「凄いジョッキーなので、とにかく無事に終わってほしい…と願っていました」とレース前の心境を振り返りつつ「中央から園田に転厩後はなかなか勝てなかったので、レース後はありがとうございますと感謝を伝えましたが“これで僕も優勝できる”と。優しかったです」と鞍上の気さくな人柄に感動した。

 大内厩務員は今年4月30日から松浦聡厩舎のスタッフに加わった。学生時代は軽音楽部に打ち込み、馬とは無縁の環境で育った。大学卒業後は書店に就職したが「ウマ娘」がきっかけで興味を持ち、園田競馬場で競走馬のドーピング検査などに関わる仕事に転職。約2年間、勤めた。そこで汗を流しながら担当馬の世話をする厩務員の姿を見て「私もやりたい」と未経験で業界に飛び込んだ。

 まだ真っ暗な時間から馬の手入れ、寝わら上げ(馬房掃除)など作業が始まる。体力的には厳しいがアットホームで楽しい厩舎がモットー。松浦聡師をはじめ、優しい先輩らが丁寧に指導してくれた。厩舎に入り、ちょうど半年がたった。「前職で厩務員の仕事を見ていて、大変だと分かっていました。入る前から理想がなかったからこそ、今は楽しく仕事ができている。厩舎の方々に恵まれました」と目を輝かせる。

 真剣に馬づくりに取り組んでも、簡単に勝てないのが競馬。だからこそ勝った時の喜びは大きい。「もちろん仕事でつらいことは多いですけど、その分、やりがいを感じている」。15年に開業した松浦聡厩舎は29日時点で通算298勝。大内厩務員は「その時のタイミングもありますが、担当馬で厩舎のメモリアル(300勝)を達成できたら」と笑顔で語った。夢は膨らむばかり。努力を積み重ね、一人前の厩務員を目指す。

 ◇大内 紗南(おおうち・さな)1999年(平11)3月10日生まれ、兵庫県西宮市出身の25歳。趣味は映画観賞。好きな作品は「すばらしき世界」。

 ◇田村 達人(たむら・たつと)1992年(平4)11月12日生まれ、大阪市城東区出身の31歳。高校卒業後に北海道新ひだか町ケイアイファームへ。育成&生産に携わる。予想スタイルは取材の感触。

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