ジョッキーの同一GI・4連覇は
武豊騎手しか達成していない記録である。しかも2度だから凄い。一回目は89〜92年の
天皇賞(春)。そしてもう一回は、意外に思われるかもしれないが01〜04年の
エリザベス女王杯だ。偉業から20年が経った今、この4勝を改めて振り返りたい。
4連覇の幕開けは、今も語り継がれる神騎乗だった。デビューから一貫して逃げ先行策を続けていた
トゥザヴィクトリーで、まさかの後方待機に出たのだ。しかもスタート直後、馬群から距離をとって、ポツンと外目を走らせる奇策中の奇策。これは行きたがる気性を考慮し、落ち着かせるための賭けだった。多くのファンはどよめいたが、名手の策は吉と出る。道中でしっかりと脚をためると、直線では馬場の外目から末脚爆発。5着までの着差がハナ、ハナ、クビ、クビという大接戦を制し、パートナーをGI初制覇に導いたのだった。
一転して02年は横綱相撲だった。デビューから5戦5勝、前走では
秋華賞を圧勝していた
ファインモーションで参戦。好位で脚をためると、直線で楽々と後続を突き放し、2着の
ダイヤモンドビコーに2馬身半差の圧勝。全く危なげのないレース運びで、単勝1.2倍の圧倒的支持に応えてみせた。
そして03年と04年は
アドマイヤグルーヴで連覇を果たす。1年目は同期の3冠牝馬・
スティルインラブとの一騎打ちだった。ラ
イバルをマークするように運び、直線で一気に脚を伸ばすと、僅かにハナ差の辛勝。牝馬3冠の雪辱を果たすとともに、パートナーに悲願のGIタイトルを送った。続く04年は堂々たる勝利だった。道中は中団で脚をためる形。直線でじわじわ伸びると、押し切りを図る
オースミハルカをゴール前で捕らえ、レース史上2頭目の連覇を果たしたのだった。