ベルピットが絶対王者として君臨する中距離路線とは異なり、今年のス
プリント路線は群雄割拠の大混戦である。3連単40万超の波乱となった4月の
エトワール賞から、重賞の度に各馬の着順が入れ替わり、短距離チャンピオンを決めるこの大一番を迎えてなお、勢力図は定まっていない。唯一古馬短距離重賞を2勝した
ストリームが出ていないこともあり、今シーズンの実績だけでは差がつかないメンバー構成となっている。
筆者はレース内容の良化度に注目し、
ドリームビリーバーを中心に据えた。5月に中央3勝クラスから再転入した当初は、やや一本調子気味の走りで甘さが目立ったのだが、当時は陣営も、状態面とやめるような気性面を気にかけていた。ただ、夏を経てコンディションが上がり、2走前の
ウポポイオータムス
プリントでは、不利な1番枠を器用に立ち回って2着に好走した。重賞で通用のメドが立ったことはもちろんだが、何より控える形で集中力を切らさず走り切れた点に、大きな成長を感じられた。初重賞制覇のドリームに懸けたい。
他にも勝つチャンスのある馬は多いが、
ドウドウキリシマなどは、前走の
ウポポイオータムス
プリント4着から前進する余地が大きくある。成績の安定感とは裏腹に癖馬の類であり、後手に回って脚を余してしまった前走は、テン乗りで難しさがあったようだ。小野騎手も前回で癖を掴んだはずで、継続騎乗はプラス材料と言える。
昨年のチャンピオンである
スティールペガサスは、今季ここまで重賞4戦未勝利と苦しんでいる。いずれも大敗しているわけではないのが、余計にもどかしい部分だろう。大一番で大役を任された兵庫の
吉村智洋騎手が、どう突破口を開くのか。手綱さばきに注目したい。
最も勢いがあるのは3連勝中の
デステージョ。特に59kgで勝利した前走は高評価だ。門別での重賞挑戦は2歳時以来だが、地力強化ぶりは侮れない。
スペシャルエックスを筆頭に、
田中淳司厩舎が送り出す4頭もそれぞれに魅力がある。大混戦を断ち、頂点に立つのは果たしてどの馬だろうか。
(文:競馬ブック・板垣祐介)