◇鈴木康弘氏「達眼」馬体診断
混戦に断を下す値千金の毛ヅヤだ。鈴木康弘元調教師(80)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第41回
マイルCS(17日、京都)では
ナミュールとともに、前走富士Sで重賞初優勝を飾った
ジュンブロッサムをトップ採点した。中でも達眼が捉えたのは
ジュンブロッサムの褐色に輝く被毛と平たん向きの体つき。重賞初勝利の次はG1初制覇だ。
京都・丹波随一の紅葉の名所、安国寺(京都府綾部市)の
モミジが色づき始めたようです。境内を包む約100本の
モミジが息をのむほど色鮮やかに染まることから別名「もみじ寺」。10月の声を聞いても異例の高温が続いた今年は全国的に紅葉が遅れていますが、もみじ寺では今週末に見頃を迎えそうです。
秋になると木々は葉の色を変えて冬支度を始める。
モミジや
カエデは赤く染まり、イチョウやポプラは黄色(黄葉)に変化しますが、ブナやトチノキは褐色(褐葉)になります。黒鹿毛の被毛が褐色に輝く
ジュンブロッサムのように…。
マイルCS有力馬の中で毛ヅヤの良さならこの5歳馬が断トツです。競走馬はくすんだ冬毛を伸ばして冬支度を始めます。樹木とは反対に色ツヤを失ってしまいますが、ブロッサムには冬毛ひとつ見られない。馬名の通り、褐色の花を咲かせるように美しく色づいています。
馬体を乾かす前の写真撮影。被毛がぬれています。ぬれ馬、値千金。ぬれた馬はしっとりと美しく映るから値打ちがあるとの意味ですが、乾いた後の馬体も値千金。被毛の内側からにじみ出したような褐葉の輝きです。よほど体調がいいのでしょう。充実の5歳秋を体現するような毛ヅヤです。
体形は父系の特徴を体現しています。祖
父ディープインパクト、父
ワールドエース譲りの柔らかい筋肉。量より質。筋肉マッチョではないが、しなやかで弾力性に富んでいます。特に首差しと肩の筋肉が素晴らしい。前肢に比べてトモが少し寂しく映るあたりも父と共通しています。父もそうでしたが、トモの薄い馬は後肢に負担がかかる上り勾配が直線に待ち受けるコースより京都のような直線平たんの方が戦いやすい。淀のターフで花咲く馬体です。
首抜けの良さもこの父系の特徴でしょう。膝下は少し細いが、腱がしっかり浮き出た健康な脚。立ち姿は頭の位置が高いが、目、耳、鼻先は前方の一点に集中しています。
京都・安国寺の紅葉よろしく、息をのむほど色鮮やかな褐葉も今週末の京都競馬場で見頃を迎えるかもしれません。値千金の毛ヅヤです。 (NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の80歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94〜04年に日本調教師会会長。
JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。
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