第44回
ジャパンC・G1は24日、東京・芝2400メートルで行われる。“世界決戦”にふさわしい外国勢3頭を迎え撃つのは、
天皇賞・秋を破格の切れ味で制した
ドウデュースだ。海外で強豪と戦った際は結果が出ていないが、
武豊騎手(55)=栗東・フリー=は「引けは取らない。東京で俺は負けたことないから」ときっぱり。「わくわくするよね」と真っ向勝負で世界に相棒の真価を見せつける。
日の丸を背負って駆け抜ける。今年の
ジャパンCは欧州からG1馬3頭が参戦。国内勢最多のG1・4勝を誇る
ドウデュースは、“日本の総大将”だ。過去の海外遠征は3戦3敗、1度は出走取消の苦い記憶。だが、
武豊は「力を出せれば、引けは取らない。なんせ、あの
イクイノックスを負かしてダービー勝ってんだから。伊達(だて)じゃないよね」と、むしろ自信を示す。
「
スペシャルウィークのときを思い出すな」。よみがえるのは、25年前の栄光だ。99年
ジャパンCには
凱旋門賞馬
モンジューなど6頭の外国馬が出走。日本代表の立場にいたのが、前年、
武豊にダービー初制覇をもたらした
スペシャルウィークだった。1馬身半差で完勝し、
モンジューは4着。日本馬の強さを証明した。
名馬2頭が紡ぐ物語の“第二章”でもある。ラ
イバルの筆頭、G1・6勝馬
オーギュストロダンは、
武豊が全14戦で騎乗した
ディープインパクトの産駒。その最強馬に05年
有馬記念で国内唯一の黒星をつけたのが、
ドウデュースの父である
ハーツクライだった。
武豊は「不思議なもんだよね。ディープの最終世代の馬がイギリスダービー馬で、
ジャパンCにやってきて、俺がハーツの子で迎え撃つ」と思いをめぐらせる。
天皇賞・秋は会心の勝利。ドバイ・ターフ5着、
宝塚記念6着と2連敗していたが、「やっとこの馬の走りができた」。鬱憤(うっぷん)を晴らした。前半59秒9の流れを、4角13番手から猛追。ラスト600メートルは最速の32秒5で、全て10秒台のラップだった。「ねじ伏せる、っていうのがぴったりやね。展開が遅いのも、上がりが速くなるのも分かってたけど、さらにその上を行くしかないからね。それができる馬」。その衝撃は海を越え、翌週に遠征した米国でも、他国の関係者に会うたび「おめでとう、
ドウデュース」と祝福された。揺るぎない信頼が、記録にも記憶にも残る勝利を生んだ。
現役生活は今年限りで、多くても
有馬記念・G1(12月22日、中山)を含めてあと2戦。「もう東京競馬場でのラストランだからね、
ドウデュースは。東京で俺は負けたことないから」。アイビーS、
日本ダービー、そして
天皇賞・秋と、
武豊が騎乗すれば3戦3勝の府中は今回が“走り納め”となる。「わくわくするよね。ほんと楽しみ」。世界決戦で、
武豊と
ドウデュースの名がとどろく。(水納 愛美)
○…管理する友道調教師は世界決戦を前に「ホームでは負けたくない。勝てば、種牡馬としての箔(はく)もまたつくから」と力を込める。前走の
天皇賞・秋は前半5ハロン59秒9の数字に「届くのかな」と一瞬、不安がよぎったが鮮やかな復活V。「
ドウデュースを分かってくれている豊ジョッキーだからこその競馬ですよね」。多くて、あと2戦だが「さみしいなんて感じることはまだないよ。レースが残っているんだから」。感傷に浸る暇はない。
【取材後記】 22年
日本ダービーに向けたインタビューを思い出した。テーマの一つが、「98年の
スペシャルウィークと同じ、
皐月賞3着からの逆襲」。
ドウデュースも見事に世代の頂点に立ったが、共通点は戦績だけではない。
武豊は「(
スペシャルウィークは)ひょうひょうとした感じの馬。それは通ずるところがあるな」と、2頭を重ね合わせていた。
武豊と
オーギュストロダンは、
凱旋門賞の前にアイルランドで対面。調教中、Aオブライエン調教師が運転するジープの助手席に乗り、並走したという。「フットワークが
ディープインパクトによく似ていた。かっこいいよね。グッドルッキングホース」。確かに、父の面影があったのだろう。
私は、ダービーをきっかけに、
ドウデュースを追い続けてきた。引退が迫るなか、国内外の強豪と戦う姿を見られるのは幸せなこと。
武豊は何度も「楽しみ」と繰り返したが、私も一人の競馬ファンとして、気持ちが高ぶる。(水納 愛美)
◆
ドウデュースの海外挑戦
▽22年ニエル賞 フランスで海外初戦。後方追走から直線で大外に持ち出すといい勢いで伸びたが、ラスト100メートルで失速し4着。
▽22年
凱旋門賞 20頭立て、重馬場に加えて、レース直前の強雨でさらにタフなコンディションに。後方でついて行くだけの大差19着に沈んだ。
▽23年ドバイ・ターフ 左前肢ハ行のため、直前で無念の出走取り消し。
▽24年ドバイ・ターフ 前年のリベンジを期したが、馬群が固まり、動けない位置に。満足に追えないまま5着。
◆今年
ジャパンCに参戦する外国勢 登録した3頭がすでに来日し、東京競馬場で調整中。
ディープインパクト産駒の最終世代でG1・6勝の
オーギュストロダン(牡4歳、愛国)、
キングジョージ6世&
クイーンエリザベスSを制した
ゴリアット(セン4歳、仏国)、速い馬場に向きそうな
ファンタスティックムーン(牡4歳、独国)。※詳細は競馬面に掲載。
スポーツ報知