日本競馬の矜持(きょうじ)を保つ剛脚だった。精鋭海外馬3頭が参戦した「第44回
ジャパンC」(24日、東京)は、“日本の総大将”
ドウデュースが1番人気に応える快勝。
天皇賞・秋に続くG1連勝で、主戦の
武豊(55)は歴代単独トップの
ジャパンC5勝目となった。
王者らしく、堂々と検量室前に引き揚げてきた
ドウデュース。その姿を
ゴリアットの名物オーナーがうらめしそうににらみつけ、世界一の調教師エイダン・オブライエンは称賛の笑顔でカメラを向ける。例年以上に日本馬VS海外勢の構図が際立った
ジャパンC。
武豊にとってもこの一戦を制する意味は大きかった。「今年は海外から本当に素晴らしい3頭が参戦してくれてレースの格も上がった。そういう馬たちと戦って勝てたのはうれしいですね」と目尻を下げた。
レースの前半5Fは62秒2。当然、G1史上最速の上がり3F(32秒5)で差し切った
天皇賞・秋のような直線勝負の構えだが、想定よりもずっとペースが遅い。向正面までなんとか相棒をなだめる
武豊。だが、
ドウデュースはもう我慢の限界だった。「ずっと全力で走りたがっていた。少し早いかと思ったが、少しずつ手綱を緩めた」。3〜4角で進出を開始。爆発的な加速でG16勝
オーギュストロダンをパスする。先頭に立ったのは残り200メートル地点。インで温存した
シンエンペラー、
ドゥレッツァより、明らかに強引な形だ。それでも、最後まで脚色は鈍らない。世界を切り裂く上がり3F32秒7で、首差のリードを守り抜いた。
芯からにじみ出るような強さに脱帽したのは誰でもない
武豊。「あれは普通ならバテる形。乗っていて“凄い馬だな”と思った」。自身は06年
ディープインパクト、16年
キタサンブラックなどに続く
ジャパンC歴代最多5勝。「着差はなかったけどかなり中身は濃い。凄く強さが出たレースだった。今日のところは(5勝の中でも)一番のレースだったと言っていいんじゃないか」と相棒を称えた。
ホームでは負けられなかった。ここまで22年
凱旋門賞(19着)、24年
ドバイターフ(5着)と海外G1では全敗。友道師は「フランス、ドバイで悔しい思いをしてきただけに、日本の競馬場では負けられないと思っていた。今日は世界の皆さまに本当の走りを見せられたと思う」と感慨深げ。英、仏、独のG1馬たちを下す快走で留飲を下げた。
ラストラン見込みの
有馬記念(12月22日、中山)を連覇なら、00年
テイエムオペラオー、04年
ゼンノロブロイに次ぐ史上3頭目の“同一年の秋古馬3冠制覇”。獲得賞金でも同期の天才
イクイノックス(現在2位)などを抜き、歴代1位となる。
武豊は「
ドウデュースと走れるのがあと1戦で終わるのは凄くさみしい。何とか3つ勝って終わりたい」と力を込める。世界一の末脚に酔いしれられるのもあと1戦。
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ドウデュース 父ハーツクライ 母ダストアンドダイヤモンズ(母の父ヴィンディケーション)19年5月7日生まれ 牡5歳 栗東・友道厩舎所属 馬主・キー
ファーズ 生産者・北海道安平町のノーザン
ファーム 戦績16戦8勝(重賞6勝目) 総獲得賞金17億7587万5800円 馬名の由来は「する+テニス用語」(勝利目前の意味)。
《松島代表念願制覇「さすが
武豊です」》
ドウデュースの馬主、キー
ファーズの松島正昭代表は
ジャパンC初制覇。「
天皇賞・秋は緊張して“勝ちたい”という気持ちが勝っていたけれど、今日はホントに楽しんでいた。さすが
武豊です。ノーザン
ファーム、友道師、
武豊。それぞれに感謝しかない」としみじみ。「この馬のこの後は、馬の状態次第だけれど、それとは別に、もう一回頑張ろうという気持ちになりました。ダービーや
ジャパンCを勝つような馬を、もう一回つくりたい。もう一回、皆さんに恩返ししたいです」と決意を新たにしていた。
《次勝てば生涯賞金22億7500万円超え》
天皇賞・秋Vで2億2000万円を獲得した
ドウデュースは、24日の
ジャパンC優勝で賞金5億円をゲット。ラストランに予定する
有馬記念も勝てば、生涯獲得賞金が22億7587万5800円となり、現在1位の
ウシュバテソーロ(22億3957万6400円)を抜いて歴代1位となる。また、“秋古馬3冠”を制したボーナスで2億円も手にすることになる。
《ノーザンF通算14勝》生産牧場のノーザン
ファームは昨年
イクイノックスに続く勝利で
ジャパンC通算14勝目。吉田勝己代表は「日本の競馬全体のため、武騎手が勝ってよかった。それにしてもあのスローで一時はどうなるかと不安も少し。でも自信を持って最後まで我慢させ、しまいを生かしたのはさすが。とにかくあの位置から上がっていって差し切るのだから凄いとしか言いようがない」と驚きを隠せなかった。
スポニチ