今年の
ジャパンCにはフランス調教馬のGoliathが出走した。同馬は「
ゴライアス」と読めるが、実際の出走表では「
ゴリアット」と表記。それを見て感じた人もいるかもしれない「外国馬の読み方ってどう決めているのだろう…」。疑問を解決すべく
JRA国際部国際企画室・上席調査役の小林雅嘉さんを直撃した。
「海外馬名にカナをあてるのは難しいケースが多いです」と小林さん。その決め方はいたってシンプルで調教国の現地実況音声を聞き、それをもとにカナ馬名をあてているという。オリジナルの言葉があれば、発音記号なども参考にし、音だけでハッキリしないケースは、各国にある
JRAの駐在事務所に意見を求めることもある。
一方で配慮すべきことは多岐に渡る。21年の
ジャパンCに出走した
グランドグローリー(
Grand Glory)。仏国調教馬のため、フランス語だと「グラン
グローリー」になるところ、Gloryが英語の言葉であることから、前半部分は「グランド」とあてた。あくまで音を大切にしつつも、意味や伝わりやすさを重視。今年の
BCマイルに出走したウィンフォーザ
マネー(
Win for the Money)も、語尾の音は「マニー」が近い。それでも「
マネー」にしたほうが、日本のファンに伝わりやすいと考えた。
また、
JRA所属馬と表記被りが起こらないようにすることもポイントのひとつ。現役馬だとレースで一緒に走る可能性があることから、伸ばし棒の挿入や「ブ」と「ヴ」で表記を分けるなどしている。例えば、今年の愛ダービーを勝った
Los Angeles。
JRAの現3歳に
ロサンゼルスが居たため、外国馬のほうは
ロスアンゼルスとなった。さらに、馬柱の中にある勝ち馬、2着馬の欄には6文字程度しか入らないことから、不自然でない限り1文字でも詰めることも考えているとのこと。
今年の
ジャパンCには3頭の外国馬が出走した中で、頭を悩ませたのが先の
ゴリアットだった。スペル通りに英語で読むと
ゴライアスとなり、実況でもそのように聞こえた。だが、フランス調教馬であることや、当初のオーナーが英語圏の人では無かったことを考慮し、カナ表記はフランス語読みの「
ゴリアット」と決定。それでも英語圏の人は
ゴライアスと発音することが多いようで、小林さんは「読み方自体よりも、英語とフランス語のどちらを取るかはすごく悩ましかった」と振り返る。
決めたカナ馬名が競馬場はもちろん、競馬場をはじめとした多くの場所に表示される。「自分が付けた馬名がテレビ越しで耳にし、新聞で目にすると、嬉しさもありますが、何より責任を強く感じますね」と小林さん。「今後もファンの皆さまにとって、なるべくなじみやすい馬名を付けたいなと思います」。一頭一頭、心を込めた名前付けが日本と世界の競馬界をつないでいる。