王者が感動の有終Vを飾った。最強ダート王を決める「第25回
チャンピオンズC」が1日、中京競馬場で行われ、
坂井瑠星(27)騎乗の1番人気
レモンポップが逃げ切り勝ち。前身の
ジャパンカップダート時代の
トランセンド(10&11年)以来、史上2頭目となる連覇を達成した。国内G1級レースは6戦全勝で引退、今後は種牡馬となる。2着に
ウィルソンテソーロ、3着に
ドゥラエレーデが入り、平地の
JRA・G1では史上初となる2年連続で1〜3着馬が同一着順となった。
最後の力を振り絞った王者
レモンポップ。その雄姿に田中博師の涙は止まらなかった。有終の美を飾った歓喜とともに湧き上がったのは「申し訳ない気持ち」。昨年の暮れ以降、気力に陰りが見え始めた姿に引退の2文字がよぎった。オーナーに激励され、意を決して臨んだラストラン。「やれるべきことはやったので、あの子の強さを信じるだけだった」。師が“先生”と仰ぐヒーローは厩舎にまた一つ、大きな財産をもたらした。
昨年の大外枠から一転、今年は1枠2番。ゲート入りした
レモンポップに担当の田端助手は「つらい思いをして走るのはこれが最後だよ」と声をかけた。天性のスタートセンスは健在。坂井に促され、一気に飛び出した。逃げ専科
ミトノオーも勢いをつけて迫るが、譲らない。「去年と同じイメージで。僕はいつも通り乗っただけ」と鞍上。前半5F60秒8は1年前(60秒9)とほぼ同じ。絶妙なペースでレースを支配した。
昨年同様、直線入り口で一気に引き離す。急坂でも脚色は衰えない。やっぱり強い。誰もが勝利を確信した瞬間、後続馬群からただ1頭、
ウィルソンテソーロが飛んできた。「あと1回だけ頑張ってくれという思いだった。(後ろから)鬼のような気配を感じたけど、何とかしのいでくれた」。
国内G1級6戦全勝のゴールは鼻差の決着。冷静な鞍上も「歴史的なダート馬。こんな馬なかなかいないと思う。その背中に自分がいられたことは誇り。引退しても忘れることのない一頭」と賛辞を並べる。有終のウイニングランを終え、検量室に引き揚げてくると「凄いな。本当に…」と感極まった表情で相棒の首筋をなでた。
直線の急坂から、われを忘れて熱くなったという田中博師。「いつも、こちらの考えていることを超えてくる馬。今回ばかりは超えられないと思ったけど…。昨年以上に感動した」と目に涙を浮かべた。2着馬を2秒0ちぎった昨年の
南部杯や、「膨らんだ風船が破れそうなぐらい」(同師)の究極仕上げだった1年前の
チャンピオンズCなど、最強と称えられるべきパフォーマンスは他にあるかも知れない。ただ、加齢に伴う衰えの壁すら乗り越えた一戦は、
レモンポップ史上至高のレースとなったに違いない。国内通算16戦13勝、2着3回。あっぱれ、
レモンポップ。
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レモンポップ 父レモンドロップキッド 母アンリーチ
エイブル(母の父ジャイアンツ
コーズウェイ)18年2月15日生まれ 牡6歳 美浦・田中博厩舎所属 馬主・ゴドルフィン 生産者・米国のオリバー・S・テイト夫妻 戦績18戦13勝(重賞7勝目) 総獲得賞金7億6020万円 馬名の由来は
レモンスカッシュ。
スポニチ