8日に開催された香港国際競走。ヴァーズ、ス
プリント、マイル、カップと一日に4つのG1競走が行われた。今回、記者はシャティン競馬でレースに向かうまでを現地取材した。
関係者がこぞって口にしていたのが、「香港馬は馬体が違うね」という言葉。確かに香港勢のすさまじい馬体や力強い脚さばきは、5日間の取材で何度も目にしてきた。結果的に4戦中3戦で香港馬が勝利。地の利があったとはいえ、距離が短くなればなるほど圧倒的な脚力、きっちりと勝ち切る勝負強さのようなものを感じた。香港内には日本のようにトレーニングセンターという施設があるわけではなく、今でもシャティン競馬場でのトレーニングが主流。もちろん競馬場に坂路はない。どういう点に違いがあるのだろうか。
「一頭にかける時間がかなり長い気がします」と説明するのは現在、シャティン競馬場の厩舎に務めている亀田一洋さんだ。亀田さんは以前は
川崎競馬場で働いており、香港に移住して10年。攻め専の調教助手として活躍している。「日本以上に乗る人、世話をする人というのがはっきり分かれているのでじっくり乗り込むことができるんです」。一日にこなすメニューにも違いがあり、「プール調教を行ってから、ウオーキング
マシンで体を動かし、そこからコースで乗ります。そして、終わってからもプール調教を行います」と、かなりハードに感じる内容を課している。さらに「午後にもプールに行きます」と一日かけてみっちり調教が行われる。
香港は“馬を生産しない”という点も日本とは異なる。「全ての馬を海外から輸入しています。調教での能力試験を行っていて、動きができてからの馬ばかりですね。2歳馬もいますが、海外でのレース経験や実績のある馬もいます」。ほとんどの馬が騸馬であるということもうなずける。「やはり千二、千四、千六に特化した馬を中心に輸入していると思いますし、500キロを切る馬はほとんどいません」。選ぶという時点でスピードや筋肉量に重点を置いているようだ。
今回のレース結果を受けても、芝2400メートルのヴァーズだけは勝利を逃しているように、やはり香港馬の強みは圧倒的な脚力、スピード、それを一瞬にして発揮できる瞬発力だと感じた。ただ、逆にいろいろなカテゴリーで世界と戦うことができる馬を輩出できるという点が日本の強み。芝、ダート、ウッドチップ、ニューポリトラック、そして坂路といった充実した施設で行われる入念な調教はさまざまなタイプの馬を生み出すことができる。
スプリンターズS覇者の
ルガルとともにス
プリントに挑んだ杉山晴師がレース後、「この経験は必ず次につながると思うし、つなげていかなければいけない」と強く口にしていたように、強豪との戦いを経て、日本馬も進化を続けていく。これから、どのような武器を持って世界と戦っていくのか。末永く、日本馬の挑戦に熱視線を送っていきたい。
提供:デイリースポーツ