「
有馬記念・G1」(22日、中山)
今回が現役ラストレースとなる
ドウデュース。有終の美を飾ることができるか注目される。当欄では、ラストランで暮れの
グランプリを制し、競走馬生活を終えた名馬を振り返る。
ディープインパクトや
オルフェーヴルなど、ラストランの
有馬記念で改めて力の差を見せつけた馬はいる。だが、この馬は“絶頂期”を迎えてターフを去るという珍しいパターンだった。
シンボリクリスエスは
有馬記念をレース史上最大の9馬身差、当時のレコードタイムで圧勝。史上4頭目の連覇となった完成形を思わせる走りには当時、他の追随を許さぬトップトレーナーだった
藤沢和雄調教師の才覚と矜恃(きょうじ)が詰まっていた。
史上初となる
天皇賞・秋連覇後の
ジャパンCで、前年に続き3着。
有馬記念での引退種牡馬入り、レース当日の引退式実施までが決定した状況下で、藤沢和師は勝負に出た。「
ジャパンC後も元気だったので、びっしり追った」。2週連続、美浦Wで7Fからの3頭併せを敢行。調教では馬に大きな負荷をかけない主義で、5Fからの追い切りが主流だった同厩舎にしては異例だった。
常に馬最優先、さらに引退して無事に牧場へ帰すことが調教師の仕事と常々話す師だけに、調整のさじ加減は難しかったはずだ。それでもデビュー以来、初めてと言えるほどハードな負荷をかけることができたのは、馬の充実ぶりに手応えがあったからこそだった。
果たして、レースでは有無を言わせぬ圧勝劇を演じ、2年連続での
JRA賞年度代表馬の座も獲得した。「調教もレースも最後が一番すごかった。まだ成長を続けていたので引退させるのはもったいないよ」。藤沢和師は、いつものいたずらっぽい笑顔で話した。
種牡馬として
エピファネイアという後継を残し、母父としても藤沢和師に悲願のダービー制覇をもたらした
レイデオロなどを輩出。2020年12月に蹄葉炎で他界したが、その血脈は広がり続けている。
提供:デイリースポーツ