ドウデュース(牡5歳、栗東・
友道康夫厩舎、
父ハーツクライ)が
有馬記念・G1(12月22日、中山・芝2500メートル)の出走を取り消した。右前肢ハ行のため。20日、友道調教師が明らかにした。
ドウデュースのラ
イバルといえば、22年
日本ダービーでワンツーだった
イクイノックス。同年の
天皇賞・秋から国内外でG1・6連勝を収め、1年早く現役を引退した。
ドウデュースの担当・前川和也助手と、
イクイノックスの調教パートナーだった阿部孝紀助手、担当した楠友広助手は、まさに戦友。取消発表前の取材に対し、
イクイノックスに携わった両助手は、
ドウデュースの印象や思い出について語っていた。
両陣営が急接近したのは23年春のドバイ遠征。楠助手は「自分たちは試行錯誤していたけど、
ドウデュースと前川さんは真っ先に馬場に飛び出して…。我が道を行く。かっこよかった」と振り返る。阿部助手はこのとき、前川助手に「いつも調教VTR見てます。うまいです」と“ファン宣言”。会話のきっかけを作った。
結果は、
イクイノックスがシーマ・クラシックを快勝、
ドウデュースはターフを出走取消と明暗が分かれたが、ここが縁の始まり。
イクイノックスは23年
宝塚記念に出走した際、栗東に滞在。その間も前川助手から食事に誘われたり、友道厩舎に呼ばれたりするなど、親切にもてなされたという。
イクイノックスのラストランとなった昨年の
ジャパンC。
ドウデュースは4着に敗れたが、ゴール後、楠助手に真っ先に抱きついたのは前川助手だった。「そこが一番泣きそうでした」と楠助手。勝者をたたえる姿勢に感銘を受けた。ハグにはハグを―。
ドウデュースが勝った今年の
ジャパンC当日、臨場していた楠助手は、もちろん前川助手と抱擁。「去年の恩を返せた。かっこよかった。一緒に戦ってきて、ラ
イバルだけど、馬も人も
リスペクトしている」。仲間の勝利を、心から喜んだ。
阿部助手は「ダービーの出走馬が、18頭中17頭重賞を勝った」と世代レベルの高さを評価。楠助手も「
イクイノックスの種馬の価値も、
ドウデュースのおかげで上がっている。世代でしっかり結果を出しているからこそ」とうなずく。2頭でG1・11勝。最強世代をリードしてきた。
イクイノックスが
ドウデュースに勝る点は? そう尋ねると楠助手は「まじめさ。そう言うと、
ドウデュースがまじめじゃないみたいだけど…。
イクイノックスの方が繊細で、優等生かな」と比較。すると阿部助手は「
ドウデュースは前川さんに似てる(笑)。馬っ気が強くて、我が道を行く」とユーモアたっぷりに表現した。一方、負ける点については、阿部助手が「食欲(笑)」と即答。楠助手も「食欲は負けますね」と同調した。
楠助手は現在、
レガレイラを担当しており、
有馬記念で
ドウデュースと対戦するはずだった。「倒すつもりでいく。勝ったまま引退させるつもりはないですよ」と勝利宣言をしつつも、「どんな結果になっても、色んな思いがこみ上げると思う」と吐露していた。
ドウデュースが出走取消となり、その対戦はかなわなかった。阿部助手、楠助手とも「残念」と悲痛な思いは共通だ。くしくも、2頭は来年から社台スタリオン
ステーションの“同僚”。産駒同士の対決という、第2章がもうすぐ始まる。(水納 愛美)
スポーツ報知