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有馬記念・G1」(22日、中山)
有馬記念の連覇と秋古馬3冠を目指していた
ドウデュース(牡5歳、栗東・友道)が右前肢ハ行で出走を取り消すことが20日、JRAから発表された。
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ファン投票で史上最多の票を得て、有終Vへ臨んだ
ドウデュース。レース前々日、そんなスターホースに飛び込んできた衝撃のニュース。関係者の心中を察すると、言葉にできないものがあるが、ふと思い出した話があった。
2年前、
凱旋門賞に挑戦する際の取材で友道師にモットーを問うと、迷わず「馬を大事に使うこと」と答えていた。「まず第一に健康を大事に、無事に馬を引退させることを心掛けています。無理していいことがなかったので」と話していたのが心に残っている。
友道師にとって、忘れられない記憶がある。開業してまだ間もない05年にデビューした
アドマイヤジュピタ。厩舎に初G1タイトルをもたらした功労馬だが、若駒時代には苦い思い出があった。2歳の12月に初勝利を挙げた同馬は
若駒S2着、
すみれS3着と好走を続け、自己条件に戻った3月の
ゆきやなぎ賞で2勝目をゲット。だが、デビューから5カ月で6走を数える強行ローテが響き、レース翌日に骨折が判明した。「1年以上休みました。その時が一番悔しかったですね。もう、無理するのはやめようと」。今でも後悔の念があったという。
今回、苦渋の決断だったのは想像にたやすいが、まさに『馬
ファースト』の精神を体現したものだろう。希代の名馬のラストラン、その舞台が
有馬記念であろうと、指揮官の信念は揺るがなかった。これこそが、トップトレーナーたるゆえんなのかもしれない。(デイリースポーツ・山本裕貴)
提供:デイリースポーツ