11年前の
フェアリーSは大混戦だった。それもそのはず、出走16頭が全て収得賞金400万円の1勝馬だったのだ。つまり、事実上1勝クラスのGIII。これは84年の
グレード制導入以降に限ると、3歳以上の重賞では初の珍事だった。
ファンも頭を悩ませた一戦だった。1番人気には新馬勝ちしたばかりの
オメガハートロックが推されたが、単勝オッズは4.4倍。
グリサージュが4.6倍、
イントロダクションが6.2倍で差がなく続き、5頭が10倍未満のオッズとなった。
レースは前半3Fが36秒1、5Fが60秒4という緩めの流れとなった。直線に向いて内ラチ沿いで
リラヴァティが粘り込みを図るが、
アンジュデュバンや
イントロダクションが食い下がる。そして坂を上がって後方勢が強襲。最後は横一戦となったが、馬群の真ん中から伸びた
オメガハートロックが僅かに抜け出して先頭でゴール。クビ差の2着は10番人気の
ニシノアカツキ、さらにクビ差で
リラヴァティが3着。実に7着までが0秒2差に収まる、まるでハンデ戦のような激戦だった。
その後、残念ながら
オメガハートロックはこれが最後の勝利に。2着の
ニシノアカツキは続く
クイーンCで3着、
オークスでも4着に健闘したが、1勝馬のままターフを去ることとなった。そんな中、3着の
リラヴァティは息長く走り、2年後に
マーメイドSを制覇。このレースに出走した馬では、
オメガハートロックを除くと唯一の重賞ウイナーとなったのだった。