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【地方競馬】コリアC制覇でディクテオンが示したダート競走体系整備の成果

  • 2025年09月29日(月) 18時00分
 9月7日、韓国・ソウル競馬場で行われたコリアカップ(G3)に、大井からディクテオンが参戦し、見事な差し切り勝ちを演じた。地方馬による海外でのグレード競走優勝は、2006年シンガポール航空国際C(G1)のコスモバルク以来19年ぶり2頭目。ダート競走では史上初の快挙だった。

 2016年に創設されたコリアCとコリアスプリント(G3)には、ほぼ毎年、日本からダートの有力馬が参戦している。特に近年では、前者が1着賞金8億ウォン(約8500万円)、後者が同7億ウォン(約7440万円)と、G3という格付けの割に賞金が高いこともあるだろう。また両レースとも、昨年からアメリカのブリーダーズカップチャレンジシリーズの対象レースとなり、コリアC優勝馬にはBCダートマイル(G1)、コリアスプリント優勝馬にはBCスプリント(G1)の優先出走権が与えられる。昨年はコリアスプリントを制したリメイクが、BCスプリントに挑戦した。

 国内では一昨年から昨年にかけてダート競走の体系整備が行われた。古馬中距離路線は、川崎記念(JpnI)が冬から春へ移行し、上半期の総決算として定着している帝王賞(JpnI)へとつながるように配置された。芝で言えば、大阪杯(GI)から宝塚記念(GI)のようなイメージだ。その元年に、ライトウォーリア川崎記念を逃げ切り、帝王賞にも出走。そして、地方所属馬として初めてコリアCに挑戦した。体系整備2年目の今年、ディクテオン川崎記念で2着に追い込み、帝王賞でも4着に健闘。この内容を踏まえ、荒山勝徳調教師はコリアCへの挑戦を視野に入れ、オーナーサイドに提案したそうだが、双方の思いが一致したことで海外遠征を決断した。

 2年連続で地方所属馬が選出されたが、川崎記念帝王賞で好結果を出せば高いレーティングを得られ、選ばれる可能性が高くなることを証明した。川崎記念の時期移行は賛否があった。冬に行われていた当時は、ドバイワールドC(G1)への壮行レースとした意味合いが強く、2023年にはウシュバテソーロ川崎記念からドバイワールドCを連勝した。その翌年、4月に移った川崎記念は、ドバイとほぼ同じ時期での施行となることで有力馬が分散し、JpnIとしては少々手薄な印象を与えた。しかし、ライトウォーリア川崎記念優勝から王道を歩み、その流れの中で同じ左回りの中距離で争われるコリアCに目を向けた。2年連続で春のビッグレースを歩んだ地方所属馬がコリアCに出走した流れは、意外な成果と言えるのでないか。

 コリアC優勝がBCダートマイルの出走権獲得という点では、レースの厳しさなどを考えると直結しづらく、ディクテオン陣営はレース後のインタビューでも、ブリーダーズCへの言及はなく、状態面を考慮した上でJBCクラシック(JpnI)を目指すと荒山調教師がコメントしていた。レースの格で言えば、コリアCより東京大賞典(GI)の方が明らかに上だ。しかし、海外のグレード競走を地方所属馬が優勝したインパクトは相当大きい。

 JRA所属馬にとっては、ダートの主要レースで思うようなローテーションが組めない陣営が多い中、地方所属馬ならレースプランを組み立てやすいメリットがある。ライトウォーリアディクテオンはともにJRAではオープンで活躍しており、ディクテオンはダートグレードを3勝していた。このような中央から地方への移籍はどんどん増えており、オーナー側も活躍しやすい環境を求める時代になってきた。「海外ではJRAも地方も関係なく、同じホースマンとして見ている」と、一昨年に浦河で行われた牧場で働く若い世代に向けた講演での、矢作芳人調教師の言葉を思い出す。ディクテオンの勝利は、カテゴリー別にダート競馬を整備し、スペシャリストを育みやすい環境を整えた成果を感じるとともに、多くの地方競馬関係者に希望を与えた。

(文:古谷剛彦)

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