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フォーエバーヤングBCクラシック勝利に思う 日本競馬界挑戦の軌跡

スポニチ
  • 2025年11月07日(金) 05時05分
 【競馬人生劇場・平松さとし】

 フォーエバーヤング(牡4=栗東・矢作芳人厩舎)がブリーダーズCクラシック(G1)を制した。

 BCの中でもメインのクラシックは、北米競馬の根幹であるダート2000メートルで争われる最高峰の一戦。ゆえにこれまでの勝ち馬のほとんどが北米調教馬であり、日本馬による制覇は史上初の快挙となった。

 この北米の頂に、今から29年前の1996年に挑んだのがタイキブリザードだ。美浦・藤沢和雄調教師(引退)が育てた同馬は、カナダ・ウッドバイン競馬場で行われたBCに出走。13頭立ての最下位に終わったものの、その挑戦は後の日本競馬の礎となった。

 タイキブリザードはシアトルスルーの産駒。当時は外国産馬が出走できる国内レースが限られていたこともあり、海の向こうに戦いの場を求めた。一見するとネガティブな遠征にも感じられるが、若き日の伯楽は周到に準備を重ねていた。

 まず遠征の1年以上前、同じオーナーのクロフネミステリーで米国遠征を実施。スタッフに海外経験を積ませ、態勢を整えた。また、現地の馬房に設置されたスピーカーの音を「うるさい」と感じると、取り外すよう要望。不可との返答に「後で弁償するから」と壊してしまったという逸話も残る。結果こそ伴わなかったが、翌年も諦めず再び挑戦した。

 「カナダと違い、日本に比較的近い西海岸なので」と再挑戦の理由を語った藤沢師。9頭立て6着と、再び栄冠には届かなかったが、前年の教訓を基に、現地馬同様ポニーを付けたり前哨戦を使ったりと、できる限りの策を講じた。

 その成果か父馬を手がけたダグラスピーターソン調教師からは「シアトルスルーと同じ、生き生きとした瞳をしている」と賛辞を受けた。

 そう考えると日本のホースマンたちの情熱と探求心は昔も今も変わらない気がする。違うのは、馬たちがその努力に応えるほどに成長し、世界の舞台で堂々と輝くようになったということだ。フォーエバーヤングの勝利は、過去の挑戦者たちが積み重ねた軌跡の上に咲いた、一輪の栄光なのかもしれない。 (フリーライター)

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