2011年3月11日に起きた東日本大震災では、引退した元競走馬たちも数多く被災している。その中には、
日経新春杯や
中山金杯2連覇を果たした
アドマイヤフジがいた。
震災当時、南相馬で過ごしていた同馬の安否を心配した一人の女性が、南相馬近辺の牧場や乗馬施設に電話をかけて行方を捜した。彼女は現役時代から、ずっと
アドマイヤフジを応援してきた熱心なファンだった。仕事の合間を縫って、必死に安否確認をした結果、無事であることが判明する。
その後も
アドマイヤフジと関わりを続けてきたその女性は、2012年、ついに同馬を買い取った。そして「フジが一番
リラックスして幸せに暮らせる環境を」と、生まれ故郷の北海道・辻牧場に預託することとなった。
アドマイヤフジは、自身の誕生日である3月1日に北海道に向けて本州を出発し、3月2日に生まれ故郷の浦河町・辻牧場に到着した。牧場関係者も、
アドマイヤフジの帰還をとても喜んだという。
東日本大震災で被災するなど、激動の日々を経験してきた
アドマイヤフジ。「ただ穏やかに、フジらしく元気に過ごしてほしい」というのが女性オーナーの唯一の願いだ。その願い通り、故郷の北の大地の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んだ
アドマイヤフジは、今、穏やかな日々を満喫している。(取材:佐々木祥恵)