2008年の
日本ダービー2着馬・
スマイルジャック(牡9・川崎・
山崎尋美厩舎)の引退セレモニーが、11月3日に
川崎競馬場で行われた。
スマイルジャックは、2007年に美浦の小桧山悟厩舎からデビューし、
スプリングS(GII)、
関屋記念(GIII)、
東京新聞杯(GIII)の重賞3勝を含め、中央通算48戦5勝の成績を残して、昨年9月19日に
川崎競馬場に移籍していた。今後は北海道新ひだか町の
アロースタッドで、種牡馬入りすることが決まっている。
この日、第7R終了後のウイナーズサークルには、
山崎尋美調教師、
山崎誠士騎手、中央時代に管理していた小桧山悟調教師、新潟総合テレビの鈴木秀喜アナウンサーが並び、すぐ後ろのコース上を
スマイルジャックが歩いた。
スマイルジャックを引いていたのは、現在の担当厩務員・志村直裕さんと、中央時代の担当調教助手(持ち乗り)の梅澤聡さん。
詰めかけたたくさんのファンが見守る中、関係するそれぞれの立場から、
スマイルジャックへの思いが語られた。
「素晴らしい成績を持ってこちらに移籍してきましたが、結果が出せなくて申し訳ない気持ちです。種牡馬となれるのは良かったです。これから
スマイルジャックの子供がこちらでも走ることがあると思います。その時には
スマイルジャック同様、応援してあげてください」(山崎調教師)
「厩舎に入ってから、これだけ長いスパンで付き合える馬というのはなかなかいないんですよね。年齢の関係で8歳までしか南関東に移籍できないということで、(8歳になって)山崎先生の所でお世話になりました。ダート、芝の競馬の違いもありましたが、本当にお世話になって、そして引退させていただくことになり、なおかつ、オーナーのご厚意で種牡馬になることができました。
スマイルの子供の成績をあげさせたいですよねと、山崎先生とも話をしました。
こういう形で引退式をやっていただけるとは思ってもいませんでしたので、
川崎競馬場の主催者の方にありがとうございますという気持ちですし、お集まりいただいたファンの皆様、本当にありがとうございました。中央、地方問わず、
スマイルジャックの子供が走る時には応援よろしくお願い致します」(小桧山調教師)
セレモニーを終えた後、山崎調教師は「人にちょっかいを出したり、9歳馬にしてはきかない馬です(笑)。ゲート練習ではポンと出るのに、本番だと出ないんですよ。こちらに来て走れなかった分、その能力を子供に伝えてほしいですね」と話し、小桧山調教師は「今日この場で、新旧の担当者2人が馬を引いたということに、1番感動しました」と、山崎厩舎の志村さん、小桧山厩舎の梅澤さんとともに歩く
スマイルジャックを見つめながらつぶやいた。
検量室前では、
スマイルジャックに関係する人々が同馬を囲んで記念撮影が行った。その中には、新潟総合テレビで制作されている「
スマイルスタジアムNST」の番組企画「競走馬命名プロジェクトII」に応募し、
スマイルジャックの名付け親となった吉川かおりさんもいた。
「番組名にちなんで、笑顔一人占めという意味を込めて名付けました。ラッキーなことに名前を選んでいただきましたが、自分が名付け親という気持ちではなく、皆のジャックという気持ちでした」
吉川さんは、これまであえて
スマイルジャックには直接会わなかった。それには無事に元気に競走馬生活を続けてほしいという、縁起担ぎのような気持ちが込められていたからだ。
スマイルジャックが競走馬としての役目を無事に終え、吉川さんはジャックに初めて会うために、新潟県上越市から
川崎競馬場に駆け付けたのだった。
多くのファン、そして関係者に愛された
スマイルジャックは、間もなく北の大地へと旅立つ。自らの血を繋いでいくという大きな仕事をするために。
(取材・写真:佐々木祥恵)