動きに派手さはないが、きっちりと態勢を整えた。
インカンテーションの最終追い切りは栗東坂路。併走パートナーの
サクラエール(3歳1000万下)相手に一杯に追った。4F54秒1-39秒1-13秒9を計時し、ゴールでは併入した。
馬房を出発して、定刻通り1時間45分後の午前8時ジャストに厩舎に戻った。歩様は柔軟かつ力強い。呼吸も静かで体に張りがある。
「通った外ラチ沿いの馬場状態が特に悪くてね。動きそのものは良かったし、状態はずっと変わりなくきていますよ」と額田助手は語った。
併せた
サクラエールの背中から
インカンテーションを注視した羽月師は「もう少し時計が出ると思いましたが」と数字面に首をひねった。だが、追った後の馬の様子をチェックしてガラッとトーンは変わった。
「人間にバタバタするなよ、って教えているのかと思うぐらい平常心なんですよ。本当に賢い。若いころは狂気を含むようなところもありましたが、今ではケイコと勝負の違いをわきまえているみたいです」。
目下3連勝中と勢いに乗っている。新潟でのオープン特別を2連勝。さらに前走の
みやこSで2度目の重賞制覇を決めて、GIの大舞台へ駒を進めた。
ケイコでは動かず、パドックで騒がず、馬場入場後も慌てない。そんな愛馬のことを「もう注文はないですね。完成したと思っています」とまで持ち上げた。左回りのダートでは7戦5勝。全7勝を1800m戦で挙げており、条件は申し分ない。
「得意の中京で行われるというのは何よりもうれしいこと。名を残したいと思っています」と指揮官。眼光穏やかな紳士が悲願達成を目前に静かに燃えている。
提供:デイリースポーツ