5日、
クリストフ・ルメール騎手は外国人では初めて
JRAの通年の騎手免許を取得した。
ルメール騎手は栗東トレーニングセンターで記者団の取材に応じた。その様子を詳しくお伝えする(取材・文:花岡貴子)。
――日本語や試験の勉強はどのようにしましたか?
ルメール「フランスでは家庭教師について日本語の勉強をしていました。日本に来てからは競馬施行規定や日本のルールを日本語で勉強していました」
――日本語は難しかったですか?
ルメール「動詞の使い方が難しいですね」
――1日何時間くらい勉強しましたか?
ルメール「2時間くらいです。わたしとミルコは日本語の学習を含めた試験勉強を100%の力を注いで頑張ってきました。だから、2人で合格できて本当に嬉しいです」
――今日(合格発表当日)、ミルコと話しましたか?
ルメール「はい。わたしからミルコに電話しようと思ったんですが、(他の人から)かかってきたりしてタイミングがなかったところ、ミルコからかかってきました。(合格発表のあと)ふたりでお互いを祝福しあいました。ふたりで同じ目標に向かって頑張ってきたので、合格できて本当に嬉しいです」
――フランスで偉大なキャリアがありながら、フランスを離れて日本で騎手になることに対しては?
ルメール「
スポーツマンには
モチベーションとゴールが必要です。もちろんフランスでたくさんのレースを勝ち実績を築いてきたわけですが、日本で騎乗するというのは新たなスタートになります。それが新しい
モチベーションになりますし、今後日本で騎乗しながらゴールに向かって進んでいくわけです。この新たなゴールに向かって頑張っていきます」
――最終的に日本に来ることを目指した時期は?
ルメール「2年前に
JRAが我々に日本での通年免許をとるという門戸を開いてくれた時からです。初年度の当時、わたしは
アガカーン殿下との契約があったので受験はしませんでした」
――3ヶ月短期免許と通年免許との違いは?
ルメール「通年乗るということは1頭の馬に長いスパンで乗ることができます。新馬戦から特別、GIII、そしてGIという
ステップをともに歩めます。新馬からクラシックへ、1頭の馬に乗り続けられるのはジョッキーにとって大事なことなので、このあたりが一番違います」
――これまで短期免許で乗った馬の中で通年免許がないためにその後のレースで騎乗できなかった中で印象的な馬は?
ルメール「
ジェンティルドンナでGIII(
シンザン記念)に騎乗しましたが、その後、彼女は“(偉大な)
ジェンティルドンナ”になりました。
ワンアンドオンリーにも騎乗(ラジオNIKKEI杯2歳S・GIII)しました」
――今後、おふたりのように外国人騎手たちは
JRAの通年免許を目指すと思いますか?
ルメール「何人かは挑戦されるとは思います。でも、それを
JRAが毎年受け入れるのかどうかはわかりません。あと、わたしもミルコも過去に13年日本で乗ってきたという実績が大きかったと思います。それだけ日本の競馬を理解していたというのをわかっていただけたのでしょう。そういう点は(一般的に)外国人騎手がこの道を目指すのは難しいと思います」
――デムーロさんと日本の騎手について話すことはありますか?
ルメール「昔はしたかもしれませんが、今は特にそういった話はしません」
――日本の競走馬の実力はどの程度だと思いますか?
ルメール「
ジャスタウェイ、
エピファネイアが世界ランキングで1位、2位でした。他にも
シーザリオ、
ヴィクトワールピサなど世界の大レースで日本馬が活躍しています。このように日本馬のレベルは高いですし、これからも世界で活躍していけると思います。また、日本の競馬の施設やファンの方々も素晴らしい。週末ごとに競馬があるというのもいい。ここがいま僕がいるべき場所だと思っています。
そして、わたしはフランス人ですし、
凱旋門賞を日本の馬で勝つというのは本当に素晴らしいことだと思います。実現したいです。わたしはこれまで日本に何年にもわたって騎乗させてもらっています。日本の馬で(故郷で開催される)
凱旋門賞を勝つことで恩返しできるのでは、と思います」
――今後、本拠地は日本になりますが、世界からオ
ファーされたときはどうしますか?
ルメール「まず、
JRAに聞かないといけません。わたしは
JRAのルールに従っていかなければいけませんので、以前のように外国で騎乗する機会は減ると思います。でも、それは受け入れた上で日本のジョッキーになりたいと思いました。いまは日本のジョッキーとして頑張ることに焦点を合わせたいと思います。でも、今後がどうなるのかはやっていきながら、という感じです」
――フランスでの騎手免許はどうなりますか?
ルメール「
JRAのルールに従います(編集部注:両方持つことはできない)。フランスの騎手免許は自動更新なので、今回
JRAの試験がパスできなかったらそのままフランスの騎手免許を持ち続けることになったでしょう。でも、今回受かったのでフランスの免許は返上ということになるでしょう」
――今後の予定は?
ルメール「手続きなどがあるので一度フランスに帰らなければいけません。(編集部注:昨年11月に落馬で負傷し、右スネの骨折。現在はリハビリ中)調教騎乗はフランスで再開することになるでしょう。3月1日から日本のレースで騎乗できるようになるので、それまでは(調教も含めて)日本での騎乗予定は今のところありません」
――3月1日以降、すでにオ
ファーされている馬はいますか?
ルメール「ありません。まだです」
――家族も日本に来ますか?
ルメール「子供たちの学校の都合で、少しあと、7月くらいになるでしょう。子供たちも日本語の勉強をします。子供たちにとっても外国語を学ぶのはいい経験になると思います」