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天才の騎乗

  • 2001年11月15日(木) 00時00分
 会心の好騎乗。レースを盛り上げる大切な要素です。エリザベス女王杯トゥザヴィクトリーの優勝は、正にその好例で、武豊の手綱こそその全てでした。

 かつてターフの魔術師と異名を取った父邦彦は、デビュー後たちまち天才と呼ばれた息子の活躍を見て、今は若いから勢いがあり、何をやっても許される。やがてまわりからマークされる25才ぐらいになれば、そうはいかなくなるだろう。その時には、言ってあげることもあるだろう。と語っていました。

 当時の豊青年は、ビデオでレースを研究する日々で、なんとかしてゴール前、馬をもっと追えないだろうかと考えていました。

 当然、父の現役時代のビデオも見ていました。そして、父が言った25才になった頃、彼のプレイにはぐっと迫力が加わり、騎乗スタイルにも変化があったように思えました。長身を沈め、低い姿勢で馬の推進力を引き出して、先頭に立ったところがゴールというシーンを度々見るにつけ、単なる天才ではないと思わせました。

 最近プレイを見ていると、特に自信のある時には、極力前半は無理をせず、馬に負担を与えないようにそれに徹し切っています。ペースが遅いと見るや、積極的に動いていったり、自在です。

 また、相手関係で劣る馬の場合は、先行するか、どこかで早めにスパートして、出来るだけ可能性を最大限に引き出そうとする配慮がうかがえます。
 これは、見る者を納得させます。

 年の瀬に向かって大レースが目白押しの中、彼が騎乗する馬は、すべてマークしなければならないでしょう。どこにチャンスがあるか、その動きを見ていれば、レースがわかるほどで、特にサンデーサイレンス産駒を扱わせたら、彼の右に出るものはありません。デビュー15年目、確実にスケールアップしている武豊を見るだけでも、満足します。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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