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札幌記念

  • 2008年08月25日(月) 13時00分
 秋のビッグレースに向けて有力馬が始動するGIIランクの一戦。大きな展望を描きたい注目馬が多かった。中では、まずグランプリホースの5歳マツリダゴッホ。

 木曜日段階での馬体重計測が482kg。香港遠征で減った体が完全には戻っていないことが判明したが、とくに筋肉が落ちたとか、全体に寂しく映る体つきでもなく「新陳代謝の盛んな夏シーズンだから細いわけではない……」と国枝調教師。まずまずの仕上がりだったろう。8分くらいの状態という判断も、85点くらいの仕上がりとする見方もあったが、それこそ絶好調などという状態は競走生活の中でめったにあるものではなく、始動の一戦とすれば一応まずまず「納得の仕上がり」だった。

 まだスパートしたくない3コーナー手前で早くも行く気満々になってしまったこと。また、当日輸送なしで478kgの馬体は心なしかこじんまり見せたから、やはり完調には一歩も二歩も及ばない状態だったが、レース内容は少しも悪くない。十分に及第点をクリアし、負けたとはいえ、このあとの秋のビッグレースシーズンに向けての展望は明るく開けたといえる。次走に予定する9月末のオールカマーでは、ぜひ、たくましさを感じさせる体つきに戻って欲しい。これまでの体調のリズムからして、秋が深まるほど体調は良くなる馬である可能性が高い。

 勝ったタスカータソルテは、まるでマツリダゴッホの得意とするスパートのパターンを待っていたかのような位置取り、仕掛けのタイミングだった。この速い流れを差し切って札幌では破格の上がり3F34.3秒。決して展開がはまったとかでは片付けられない鋭さだった。春の中京記念の内容と合わせ、平坦コースで一瞬の鋭さをうまく引き出したときに能力全開のタイプであることは確かだが、仮にそういうタイプとしても以前より明らかにパワーアップしている。血統背景は異なるが、タイプとするとスウィフトカレント型かもしれない。目標は天皇賞・秋になる。脚の使いどころの難しい馬だけに、横山典騎手とのコンビが続くと侮れなくなる。

 マイネルチャールズは、体が戻ったというより確実に成長し全体にたくましくなっている。追い切り快走は、あれは多分にかかって行ったもので、どちらかといえば使って良化型。今回は初めて経験する息の入れにくいハイペースの流れで、反応が鈍かったというより2段加速のペースアップに対応できなかったと考えたい。また、あの流れでマツリダゴッホと同じ位置から、同じようにスパートできるなら今春のクラシックで勝ち負けに持ち込んでいたともいえる。松岡騎手の「負けられない」と自分たちをあえて鼓舞する姿勢は、やがてスケールアップにつながるはずで、今回のマイネルチャールズこそ秋に向けての始動と試練の一戦だったろう。ただ、それにしても案外だったあたり、3歳クラシック組のレベル(勝ち馬2頭は別にして)をささやかれるのは、しばらくの間は仕方がない。そんな声を覆すような秋の成長に期待したい。

 3着にとどまったフィールドベアーは、力を出し切っている。もっとも順調にきていただけに力負けの印象はぬぐえないが、マツリダゴッホ相手に0.2秒差。時計は1分58秒6。そういう視点なら地力アップ確実である。コンゴウリキシオーは難しい面をモロに出して自滅したが、一定のペースでの逃げを打ちたいこのタイプの馬に、小回りコースは合うようで実際には不向き。スランプは脱しつつあり、京都、東京で巻き返したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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