サマー2000シリーズの最終戦は、シリーズチャンピオンを狙って新潟記念への遠征を決めた馬ではなかった。勝ったアルコセニョーラは最初の「七夕賞」を12着(1ポイント)。この時点でもうシリーズの有力馬ではなく、小倉記念も函館記念もまったく陣営のローテーションには関係なく、新潟記念だけにマトをしぼっていた伏兵だった。
夏の「牝馬」。とくにこの新潟記念での牝馬の驚異的な活躍は知られるが、2000シリーズの最終戦となって、たぶん、人気のダイシングロウ、あるいはエリモハリアーあたり、最初は新潟記念を予定のローテーションに入れていた馬ではないだろう。そういう有力馬が増えることになって、さらに気楽な立場の「伏兵牝馬」が怖い存在になるのかもしれない。少なくとも、これからも人気の盲点になるのはこういう馬ではないのかと感じた。
たまたまこの日、札幌の「キーンランドC」を制した8歳タニノマティーニも、スプリントシリーズの候補でも有力馬でもなんでもなく、夏の北海道戦(これで全9勝中6勝が札幌、函館)にかすかに活躍の場を求めていた馬だった。
そうかといって、16番人気のタニノマティーニや同じく16番人気アルコセニョーラを大きく狙うのは至難だが、アルコセニョーラとて、これで新潟の芝[1-2-1-0]の平坦巧者であり、このレースを迎える前の持ち時計は1分58秒3。可能性は十分に秘めていたから候補には加えられる馬だった。
レースの流れは前後半「58.8秒-58.7秒」。それで1分57秒5の決着。バランスとすれば平均ペースということになるが、全体に息の入れにくい高速の平均ラップが続き、ほんの少しだけラップの落ちたところで巧みに息を入れることができるのは、外回りの新潟2000mを熟知している騎手でなければならない。それも今回の難しい新潟記念では大きな要素だっただろう。上位を占めたのは武士沢騎手、後藤騎手、木幡騎手、柴田善騎手、村田騎手、中舘騎手…。みんな新潟外回り2000mの経験豊富な騎手ばかりだった。
ダイシングロウはこの日ちょっとカリカリして、いかにも折り合いが難しく見えた。途中でハナに立ってリズムを取り戻そうという川田騎手の思いきりのいい大胆な騎乗は決して乱暴ではない。しかし、こと新潟2000mでは馬が行きたがった時点で、なおかつ行かせてしまった時点でアウトだった。
勝ったアルコセニョーラはまったく無理することなく、切れ味を生かすために前半は控えてスタミナ温存。ビシッと追って体重増加の小柄な牝馬。父ステイゴールド譲りのスタミナ、健康でタフな成長力。可能性を秘めていたことは確かだが、武士沢騎手の落ち着きはらった隙のない騎乗が光った。マイネルキッツ(後藤騎手)も流れにのって好位で我慢し、スパートのタイミングに最大のポイントを置いた絶妙の騎乗。初コースながら平坦新潟の外回りはベストであることを示した。
トウショウシロッコは、追い切りの動きが光っていた。デキの良さならピカ一だったろう。それでも一連の内容から足りないと思えたが、ハンデ重賞にいらない馬はいない。デキの目立つ馬は決して軽視してはいけないのが、夏競馬だった。
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