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京成杯AH

  • 2008年09月15日(月) 12時51分
 前日の土曜日に500万条件のマイル戦で、1000m通過56.8秒の猛ペースで飛ばした馬が失速するどころか1分32秒8で粘って2着した高速の芝コンディション。

 先行したい陣営にとって、少々のハイペースでも「強気に行った方がいい」。そういう読みもあったろう。最初、二の足のついたダンツキッスイとゴスホークケンが競り合い、それを振り切ってハナに立って飛ばしたゴスホークケンの刻んだペースは、「32.8-44.0秒……」。1000mは55.9秒。まるでスプリント戦のようなハイラップが続き、1200m通過は1分07秒8だった。コースは違うとはいえ、この日のGIIセントウルSの勝ち時計が1分07秒3(人気のスズカフェニックスは1分07秒9)だから、その猛ペースぶりが分かる。1600m戦としては史上類を見ない,歴史的なハイペースだった。

 ゴスホークケンは15着、ダンツキッスイは16着に沈んでいる。ゴスホークケンは朝日杯FSのあと、天賦のスピードは失っていないが心身両面の大スランプ。最近はこのタイプの輸入外国産馬が減っていたので忘れかけていたが、アメリカ産馬ゆえ、あってはならない育成手段(遅まきながらやっと今年になって薬品使用の全面禁止が叫ばれている)の隠れた被害馬ではないか、そんな心配さえ生じてきた。とくに精神面で完全に成長が止まっているように見えるところが怖い。なんとか復活させたいものだ。

 超ハイペースだったのは前の2頭だけではない。3コーナー手前から後続もピッチを上げて接近したから、中団外の理想的な位置をキープし、流れに乗って進出したようにみえた人気のリザーブカードの1000m通過も振り返れば「56.6秒」。結果的に前傾すぎたペースに巻き込まれていた。これでは伸びなくても仕方がない。

 勝ったキストゥヘヴンは夏場を待機し、狙いを定めて登場。ふっくらみせる素晴らしい体つきだった。なおかつ外枠だったこともあり、この超ハイペースの中、藤田騎手は落ち着いて他の動きを見ながらスパートのタイミングを計る余裕があった。1分32秒1。最後は後続に決定的な差をつけたあたりが、桜花賞馬の貫録だろう。勝ちきれないレースが続いていたが、3歳の春より明らかにたくましくなっている。スイーブの一族らしい底力を示すことに成功し、秋のビッグレースへの展望は大きく広がった。

 3歳レッツゴーキリシマは見事。朝日杯と同じように内枠の利を最大限に生かした。数字の上では猛ペースに巻き込まれていたことになるが、インで巧みに一旦は控えている。復帰した北村宏騎手は、もともと小回りの中山ではコースロスを避けインで我慢するのが得意のパターンだが、大きな怪我のあとで馬群の内にもぐりこむのは大変なこと。これで完全復活なった。

 ステキシンスケクンはスタートもう一歩。下げたのは作戦ではないように見えたが、ダッシュがつかなかった時点でたちまち作戦変更。同馬とすればめったにない追い込む形で1分32秒4だから、負けはしたが中山1600m巧者で、かつマイラーとしての侮りがたい能力はフルに発揮したといえる。キストゥへヴンにつられるように外からスパート。「一瞬は差し切れるかと思えた…」(後藤騎手)。そんな味のある内容だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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