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毎日王冠

  • 2008年10月13日(月) 12時59分
 ウオッカが自分で主導権をにぎってレースを作り、1分44秒6で乗り切ってみせた。記録はコースレコードと0.4秒差。その中身は、「前半800m47.7秒-(11.6秒)-後半800m45.3秒」。

 数字のバランスからするとスローに近いが、総合能力の問われる東京の1800mで1000m通過が59.3秒なら、よどみない理想の平均ペースの範囲だろう。鮮やかな逃げ切りが決まったと見えたが、これを差し切ったスーパーホーネットは素晴らしい。

 先頭を終始射程に入れた5番手のインから、上がり33.8秒でまとめたウオッカを綺麗に捕らえてみせた。楽なペースで好位追走の形になったことにより、1400mのスワンS、京王杯SCを1分20秒7〜8で抜け出したスピード能力が爆発したのだろうが、1800mをこの内容なら目標のマイルCSではかなり強気になれる。天皇賞・秋も視野に入るかもしれない。

 ほぼ完璧ともいえるレース内容を示しながら、武豊騎手のウオッカはまた負けてしまった。武豊騎手だから、安田記念(岩田騎手)と同じような先行抜け出しを図る形はないと思えた。自分でレースを作ったのは、(たぶん)枠順とメンバーが決まってから描いた作戦通りだろう。99%まで正解だった。しかし、これで負けたのはつらい。

 追い込む形も、好位差しも、今回のように自分で主導権をにぎる形も、どんなパターンになってもOKを示したと同時に、かえって確勝のパターンを見えなくしてしまった。もともと行きたがるタイプ、いつも折り合いに課題はある。天皇賞・秋の2000mでは、枠順にもよるが、どんな戦法になるのだろう。自らを苦しい立場に追い込んだ危険がある。もっとも、引き続いて武豊騎手が乗るならとくに問題はないが、メイショウサムソンが天皇賞に間に合う可能性もある。

 もし、メイショウサムソンが間に合ったら、はたして武豊騎手はどちらに騎乗するのだろう。というより、どちらに乗りたいのだろう。京都大賞典のアドマイヤジュピタが完全に夏の調整に失敗した(春の天皇賞からマイナス14kgで完敗)。とても3週後の天皇賞・秋に完調には戻りそうもないから、また岩田騎手が空く可能性もあるが、武豊騎手でも岩田騎手でもない場合のウオッカは、今回、気分よく自分で行くレースをしてしまっただけに、それは厳しい立場に立たされる。

 トップホースの騎手が、状況によって再三変わるのは少しも不思議ではないが、海外遠征を展望しての乗り替わりだったウオッカや、メイショウサムソンの場合、騎手変更のもたらす影響は状況が変化し、また日本で走るとなると限りなくややこしくなる。とくにメイショウサムソンは、凱旋門賞のあのふがいないレースでは武豊騎手はつづけて乗ることにより、自身の、さらにはメイショウサムソンのプライドを取り戻したいだろう…。

 スローというより、3コーナー過ぎからの3Fに33.3秒(11.5-10.5-11.3秒)の高速ラップが刻まれたため、上位を占めたのは先行した馬ばかり。追い上げに脚を使わされることになった差し=追い込みグループは、まったくいいところなしに終わった。5着カンパニーは仕上がっていたというより、もう完成されている古馬なのに休み明けでマイナス16kg。単なる直前の輸送減りならいいが、このあとが心配になる体つきだった。期待したオースミグラスワンもマイナス16kg。巨漢馬だけにさして細くはなかったが、ウオッカ(武豊騎手)の途中からピッチを上げ始める巧みな逃げにより、直線だけの競馬にもつれこむことができなかった。

 デキはいいと見えたドリームパスポート(三浦騎手)は、まったくいいところなく11着止まり。スランプ脱出のきっかけをつかめなかった。秋の古馬GIシリーズに、意外に大きな勢力図の変化がありそうな東西の2重賞だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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