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アルゼンチン共和国杯

  • 2008年11月10日(月) 12時58分
 あまり速くならずスローに近い流れも予測されたが、伏兵セタガヤフラッグ、テイエムプリキュアの先導でレース全体のバランスは「72.1(6.1)-72.6秒」。

 ハロン13秒台のラップがひとつもないどころか、もっとも遅いラップが「12.3秒」という緩みなしの高速レースが展開された。勝ち時計2分30秒8は、東京2500mで行われたこの重賞のレースレコード。昨07年アドマイヤジュピタの2分30秒9がこれまでのレースレコードだから、中身の濃いレースだった。また、よどみない流れになったためスパートのタイミング、仕掛けどころが難しかった。少々きつくても流れに乗った伏兵テイエムプリキュアが2分31秒2。あと一歩の4着に粘ったあたりが、このレースの特徴を明解に示している。

 勝ったスクリーンヒーロー(父グラスワンダー)は、有力馬の中ではもっとも前に位置しスパートのタイミングも絶妙。他の有力馬を待つことなく一気にスパートし、坂を上がったあたりで早くも勝利を決定的にしてしまった。自身の位置した道中の5番手あたりはきついペースではなかったとはいえ、自分から仕掛けて出て上がり33.7秒。53kgの軽量が味方したというより、4歳の秋、秘める資質がようやくフルに開花してきたと考えていい。3歳牝馬のエフティマイアと同じく引退した矢野進厩舎から鹿戸厩舎に管理が移った同馬は、その祖母ダイナアクトレス。骨折のため1年近い休養があったから、これからいよいよ本格化の期待ができる。

 人気のアルナスラインとジャガーメイルは、向こう正面ではほぼ同じ位置。スパートのタイミングもほぼ同じで、アルナスラインに連れてジャガーメイルも動くことになった。

 前回の対戦では58kgのジャガーメイルは、56kgのスクリーンヒーローをきっちり捕らえたが、今回は2500mで流れもまったく別。アルナスラインをマークする形になったのが、うまく流れに乗って一歩早くスパートすることに成功したスクリーンヒーローとの0.2秒差だろう。負けたとはいえ、今回の上がり3Fも33.4秒。東京の2400〜2500mでは連続して4連対を続けている。こちらも充実の4歳秋を迎え、一戦ごとにパワーアップし、まだまだ前進すること必至だ。

 同じ4歳牡馬として人気の中心になったアルナスラインは、いくらも負けているわけではないが、トップハンデの58kgとはいえその内容は案外だった。残った数字は2500m2分31秒0の好時計、上がり33.6秒。これだけをみるなら少しも悪くないが、最後はドタドタした印象のストライドで内田騎手が懸命に追ってももう脚は残っていない感じだった。もう少し前に位置しても良かったとはいえるが、同じ位置にいたジャガーメイルに先着を許したのだから、中身は完敗に近い。

 春のメトロポリタンSより全体の印象が「鈍」に映ってしまったのは、ハンデ差があったとはいえ、先着を許した同じ4歳の2頭が一段と強くなっていたこと。大型馬でもポン駆けは利くこの馬、使って2戦目はいいように思えて意外にそうでもないこと。もうひとつは、確かに3000mの菊花賞で2着しているが、それはまだみんな未完成の3歳秋のこと。本当は長距離に対する適性はそれほど高いわけでもないのかもしれない。

 540kg前後の巨漢馬。バランスはとれているとはいえ、「自分自身が負担をかけてしまう運命にあるから、こういう大型馬には長距離タイプは少ない」。その定説が当てはまってしまったのだろう。おそらく58kgのハンデが主敗因ではない。

 たまたまこのレースでは、同じく540kg台の巨漢馬キングアーサーも人気を集めたが、2000m前後のレースと違って伸びる余力がなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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