スタートした瞬間、つまずいたポルトフィーノ(武豊騎手)が落馬のアクシデント。いきなり波乱を思わせたが、カラ馬となったポルトフィーノは他の馬の進路を横切るような逸走はしなかった。残った17頭にほとんど影響はなく、途中から意外なほどスムーズに淡々と流れるレースが展開された。
飛ばすことを宣言していたコスモプラチナは、最初は少しカラ馬に影響されたがすぐにマイペース。前半の1000m通過は59.3秒。しかし、他の先行馬は惑わされることなく自分のペースを守り、有力馬の中でもっとも前に位置することになったリトルアマポーラの1000m通過は推定61.0秒前後だろう。
好スタートから少しも無理することなく理想の5〜6番手につけられた。ルメール騎手の凄いところは、リトルアマポーラの過去のレース再生を自分で見て確認しながらイメージをふくらませていたこと。短期免許とはいいながら、カワカミプリンセスのレースも十分に承知で、なおかつ2年前のエリザベス女王杯にも乗っているから、人気の中心カワカミプリンセスの馬体や気配や、レース運びまで分かってしまっている。すんなり5〜6番手で流れに乗った時点でリトルアマポーラの好走は約束されたといえる。
そのリトルアマポーラを見るように直後にカワカミプリンセス。さらにその直後にベッラレイア。後半のペースアップに合わせそれぞれのスパートのタイミングもほとんど同じように見えた。結局、この順番は最後まで変わることなく、3頭の上がり3Fはそろって「34.4〜34.5秒」。カワカミプリンセスはリトルアマポーラをマークし、ベッラレイアはそのカワカミプリンセスをマークしながらとうとう順位は変わらなかった。
リトルアマポーラには、上昇3歳馬の強み、54kg、それに秋華賞が直線だけの形作りのような競馬に終わっていたから、秋の活力があり余るほど残されていた。あくまで挑戦者という少し楽な立場も有利だったろう。入れ替わりのないレース展開も大きく味方したといえる。3歳馬のレベルうんぬんも半分は振り払った。
完敗を認め、相手を讃えるしかない2着にとどまったカワカミプリンセスは、1週前に破格の時計で追い切り渾身の仕上げ。切れ味だけの勝負になったわけでもない。前にいるリトルアマポーラを捕らえるのはそう難しくないと思えたが、2年前の3歳時ほど追って伸びなかった。輝きだけだった3歳秋より、完成されたいまこそ古馬の強みを発揮できると思えたが、レースで消耗していないとはいえ2年はやはり長い時間なのだろう。今回に限るとレース内容はあまり良くなかった。
ベッラレイアは直線中ほど、一度はカワカミプリンセスに並ぶかと見えたが、勢いはそこまで。こちらも「がんばったが、1着、2着馬が強かった」と素直に相手を讃えるしかなかった。ほぼ能力は出し切っている。
ポルトフィーノは、いかにも残念なスタート直後の落馬。改めて不思議な馬になってしまった。取り消し、骨折回避、除外、落馬…。いつもアクシデントが待っている。
しかし、ポルトフィーノ自身はプライドを保った。落馬してカラ馬になった馬が先頭でゴールするケースは珍しくないが、それは馬群と一緒になって走ったとき。今回のようにスタートで騎手を失い、途中で先頭に立ってはみたが、制御を失いやがて馬群から少し離れていた馬の先頭ゴールはめったにない。ポルトフィーノは4コーナーの外でライバルがゴールに近づいているのを見た瞬間、突然、再びレースに加わり、猛然とスパートして一気に差し切ってしまった。自分が最初にゴールに到達しなければ気が済まなかったのだろう。
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