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マイルCS

  • 2008年11月25日(火) 12時50分
 ちょうど中間地点あたりに上り下りの坂がある京都外回り1600mは、レース全体の前後半が同じようなバランスになることが多い。今年の流れは「前半800m46.3秒-後半800m46.3秒」=1分32秒6。トップマイラーが能力を発揮するのにおよそ注文のつかない流れだった。たまたまではなく、昨年ダイワメジャーが1分32秒7で2連覇を達成したときのレースバランスも「前半46.4秒-後半46.3秒」。

 今回のスーパーホーネットは、昨年とは位置取りもスパートのタイミングもちょっと異なっていたが、まったく同じ「1分32秒7」で連続の2着。ほかのコースではなかなか出現しないだろうこういう記録が、連勝馬や、連続2着馬を再三送り続けているマイルCSの、つまりは京都1600mの最大特徴であることを改めて強く印象づける結果だった。

 勝ったブルーメンブラットの上がり3Fも、3/4馬身差で2着スーパーホーネットのそれもまったく同じ「33.9秒」。なのに、残り3Fの地点ではほぼ同じような位置にいた2頭に明らかな差がついたのは、コース取りの差といってはスーパーホーネット(藤岡佑介騎手)にはかわいそうで、通らざるを得なかったコースの差(枠順)だろう。もう少し強気に前につけることはできたかもしれない。たしかにそれはいえるが、ブルーメンブラットと同じコース取りは、大外17番枠で人気のスーパーホーネットにはできない。

 また、ブルーメンブラットの33.9秒はスーパーホーネットのそれとはだいぶ異なり、インを突いてコースロスを防ぎながら、なおかつ最後の1Fに爆発力を凝縮させた吉田豊騎手の素晴らしい仕掛けによるところ大だった。

 そのうえ勝ったブルーメンブラットは、陣営でさえまた再び10kg増の馬体重に驚いたくらいで、この秋になっての充実はそれこそ驚異に近い。春のヴィクトリアマイルで小差の3着は、着差はウオッカにハナ差とはいえ、スランプの相手にこちらは完璧に乗っての敗戦に近く、「マイルはちょっと長いかも? ゴール寸前は鈍ってしまった…後藤騎手」という内容だった。

 ところが、5歳秋になって東京1800mを自己最高タイムで快勝し、1600mでも自分の記録を大きく更新してしまったからすごい。まだ強くなるのかもしれないが、もう3月までには適鞍はなく、このまま引退の可能性が大きい。

 スーパーホーネットは残念な敗戦だったが、こちらは男馬でまだ5歳。12月の香港もあれば来季もある。父ロドリゴデトリアーノの後継馬になるべく、さらなるスケールアップに期待したい。同じ5歳ファイングレインの小差3着も中身十分。1200mで開花したとはいえ、もともと1600mを中心にOPに出世した馬であり、スランプ脱出と同時にこのあとの展望はまた大きく広がった。

 坂路で前半から飛ばしビシッと追い切ったカンパニーは馬体重減もなく、気配も決して悪くなかった。懸念された天皇賞(快レコードと同タイム1分57秒2)の反動も疲れもほとんどないように見えたが、レースでは道中の反応もう一歩。底力で押し上げてはきたものの、全能力を振り絞って激走した直後の7歳馬。昨年以上は難しかったのだろう(ジャパンC組も、秋の天皇賞が厳しすぎた危険はあるかもしれない)。

 以下、5着ローレルゲレイロ、6着マルカシェンク…。紛れの生じにくい1600mらしく、能力を認められたグループが上位を占めた。そんな中、6頭出走の関東所属馬がきれいに10〜15着に並んでしまったのは残念だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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