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ジャパンCダート

  • 2008年12月08日(月) 13時00分
 カネヒキリ(父フジキセキ)の奇跡の復活に素直に脱帽したい。屈腱炎で2年4か月もの休養ブランクがあり、それもただ休んでいたのではなく2度の手術を施されたあと、不死鳥になって戻ってきたからすごい。このジャパンCダートを制したのはもう3年も前の05年のこと。同じGIを2年もの間をおいて勝ったのはそれこそ未曾有、歴史的な快挙である。治療で2年以上も休みながら競走能力には少しの陰りもみせなかった。屈腱炎治療に対する医療技術の進歩、オーナー以下関わった人びとの競走馬の再生復活にかけた熱意もすごいが、サラブレッドの競走生命に対する認識を大きく改めさせた点でも素晴らしい勝ち星だった。

 阪神の1800mにコースを替え、展開(流れ)の予測しにくいダートGIだった。この距離ならと招待に応じたアメリカ勢が強気に飛ばす期待もあったが、プラード騎手(ティンカップチャリス)はパドックの時点で最初から勝負になる力関係ではないのを承知だったのだろう。先頭には立ったが内を大きく開け、邪魔はしないという形だけの先行。2コーナーで早くも主導権はサクセスブロッケンに移った。1000m通過は60.2秒。前日の1600万条件のレースと同じで無理のない平均ペース。カネヒキリはいつのまにか好位のイン。

 人気のヴァーミリアンは他馬に寄られる不利もあって予想外の後方追走になったが、折り合いを欠いたわけではなく、差す形に腹をくくったようにみえた。スパートのタイミングが難しい独特のコース形態の阪神。仕掛け始めた3コーナー過ぎからずっと外を回るロスはあった。また、決して自分の形ではない後方からの競馬になったのもいかにも不運だったが、自分よりもっと後方に位置し、さらに外を回ったメイショウトウコン(そうは速い脚の長続きしない伏兵)に、最後は競り負けて3着。案外だった感もぬぐえない。

 この季節の大きな馬だから、プラス12kgが太め残りとか余裕残しであるわけもなく、ドバイで期待を大きく裏切る大凡走に終わったときと同様、ちょっとリズムが崩れると意外にもろい一面を露呈してしまった。もちろん、全能力を出し切っての敗戦ではなく、出走が予想される次の東京大賞典では巻き返してくれること必至だが、この6歳世代にはさして変わらない能力をもったダート界のチャンピオン級がほかにもいっぱい存在する。そのことを示す敗戦でもあったろう。

 3歳サクセスブロッケンは素晴らしい仕上がりだった。ハナを切るレースも前回で経験済み。このペースならしのぎ切ること可能なはずだが、古馬相手のオープンのトップクラスがずらっと揃って、ペースやラップには表れない緊張感と迫力に圧倒されてしまったのだろうか。周りの記者から「あまりに素晴らしく見えすぎる馬体だった」という感想もあった。たしかにそういうことはある。究極の仕上がりと、文句なしの体つきは紙一重で絶好調とは微妙にズレることは珍しくない。もちろん、これからのエース格である。

 同じ3歳馬カジノドライヴもすごい手ごたえで4コーナーを回ってきた。最後の競り合い、せめぎ合いで力尽きたのは、サクセスブロッケンと同様、強敵相手との対戦の少なさだろう。期待を裏切ったわけではない。

 これからのカジノドライヴに対する期待はまた一段と大きくなった。ただ、これはカジノドライヴとは直接には関係ないが、国際間のレーティング数値のかかえる矛盾や、自国のレースランクの位置を主張する姿勢はますます難しくなりそうである。この秋の国際レース、わたしたち日本のレースから判断するに2ケタの98とか、97ぐらいのレーティングが妥当と思える海外の馬が、日本馬を大きく上回る数値を持って来日し、馬場の違いとかではなく、最初からレースになりようもない力量であるケースの連続である。ひところ、日本の数値のつけ方がおかしいのではないかと思っていたが、どうやらそうではない。大きく異なる国際間のレースが増えるごとに、ますますレーティングのかかえる難しさ、矛盾が全面に出てきている。

 伏兵アドマイヤフジの快走に期待して、(当然のように)惨敗。これはもう猛反省するしかないが、今回はヴァーミリアンも、サクセスブロッケンも、カジノドライヴもなにかが違う気がしてどうしても本命にできなかった。そのうえカネヒキリはもっと苦しいと考えていたから、最初から的中と遠い完敗だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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