大接戦になったゴール前の追い比べを制したのは、内に切れ込むように突っ込んだセイウンワンダー(父グラスワンダー)だった。中間に一頓挫あって3か月半の休み明けながら、勝負強さ、スケールで一枚上回ったとすべきだろう。今週27日(土)に距離2000mの「ラジオNIKKEI杯2歳S」があり、2歳牡馬チャンピオン争いも、勢力図もまだまだ不透明だが、ことマイル路線ではセイウンワンダーが確実に頭ひとつリードしたのではないか。そんな印象を与える渋い勝ち方だった。
勝ち時計は予測をかなり下回る1分35秒1。前日の「ひいらぎ賞」2歳500万下がメジロチャンプのスローの逃げ切りで1分35秒3。古馬1000万の平場が1分35秒3。そしてこの日の直前の古馬1600万特別が前半1000m通過58.7秒という「朝日杯FS」とほぼ同じような流れで1分34秒4。例年より少し時計のかかる芝コンディションを考慮しても、2歳12月(間もなく3歳)のGI格のレースとすると、なんとなくちょっと物足りなかったかもしれない。
走破タイムはあくまでレースレベルの目安のひとつにすぎないが、朝日杯のレース前半のペース「34.3-46.3-58.8秒……」は、1600mでは全体の時計がもっとも速くなる無理のない平均ペースと考えられるだけに、セイウンワンダー以下、ここに出走のメンバーは各馬ともにそう差のない力関係で、少なくとも牝馬のブエナビスタのように「一頭だけ抜け出した」勢力図ではないことだけはたしかである。
セイウンワンダーは、またまた評価急上昇の種牡馬グラスワンダー産駒。なおかつ母方は、メイショウサムソンやウオッカを送り、近年になって再び注目を集めるフロリースカップ分枝から発展の伝統のファミリー。タフに成長しそうな予感も期待も大である。おそらく少し時計がかかったのもこの馬にとって最高だったのだろう。 フィフスペトルは1600mOKを示したのは大きい。上がり3ハロンの時計は通ったコースもありセイウンワンダーより0.2秒遅い35.2秒が記録として残るが、ゴール寸前の勢いではむしろ上回っていた。体型からマイラーだろうが非力感はまったくない。
武豊騎手がこの週ただ1頭だけ乗ったブレイクランアウト(1番人気)は、評価がかなり分かれることになる。この流れだからスパートのタイミングも、ずっと外を回ったこともさして大きな敗因とはいえない。ゴール寸前は迫力負けの印象はぬぐえず、あの新潟の衝撃の勝ちっぷりからすると、負け方は前回よりさらに今回の方が悪かった気がする。 ときにアメリカ生まれの外国産馬に見られる尻下がりの成績に陥るタイプとはまだ考えたくないが、立て直して再出発の来年春、一気に巻き返してくるようでないと評価は急落することになる。
ホッコータキオンは多くの2歳馬にとって、ましてや初コースの馬にとっては大きな不利の外枠にしては、展望の広がる善戦好走だろう。折り合って好位追走の形がとれた。また、ふっくら見せた馬体も印象的で、この敗戦で評価は少しも下がらない。
ミッキーパンプキン(ペリエ騎手)は道中の位置取り、およびペースを考えると、4コーナーでは「勝つのはこの馬」と思えるほどだったが、大跳びで一瞬の脚がないためか、うまくスパートできなかった。また、坂が応えてもいた。初コースのためもあるのだろうが中山向きの馬ではなく、距離も2000前後は欲しい気がした。
期待したシェーンヴァルトは、レース前の落ち着きは十分。首の高いキャンターはレース前の返し馬で物見をしていただけで、決してスタートも悪くなかったが、直前のレースで鞍上の北村友一騎手が斜行降着のペナルティーを受けたばかり。ベテラン騎手ならたちまち気持ちの切り替えも可能だろうが(セイウンワンダーの岩田騎手は前日に失格。騎乗停止)、若い北村騎手にはさすがにそれはムリで、狭くなった2コーナーで引いて下げざるを得なかった。人馬ともに来春は巻き返したい。凡走組では、トレノパズルの馬体の良さが目についたが、キャリアというより1600m向きでもないだろう。
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