途中から良馬場に変更された芝コースは、直前の1600m(古馬1000万下)の勝ち時計が1分36秒0にとどまったようにかなりパワーを求められるタフなコンディションだった。
軽い芝でスピード、切れ味を発揮したいグループにとっては、予測された以上に苦しいコースだったろう。明暗は大きく分かれた。
勝ったのは、2度の骨折休養があって長く勝ち星から遠ざかっていた6歳ネヴァブション(父マーベラスサンデー)。4歳の春、3連勝して天皇賞・春に挑戦して以来の久しぶりの勝利だった。
追い込みの決まりそうもない芝コンディションを考慮して先行策を取った横山典騎手の好判断も大きいが、2度も骨折して長期休養を余儀なくされた馬を、無理することなく復活に向けて調整を続けてきた陣営の快心の1勝でもある。
8歳エアシェイディもそうだが、伊藤正徳調教師の悠久さえ思わせる気の長い展望はつとに知られる。ネヴァブションは見事に、鮮やかに復活した。
典型的な中〜長距離タイプで、こういう少し時計のかかる芝コンディションがぴったり合っていたのは確かだが、この春の天皇賞3200mにはとくに強気になれる有力馬はいない。4歳時の天皇賞・春ではメイショウサムソンの13着に終わっているが、このまま順調にいって時計のかかる馬場状態に恵まれるようだと、4歳時以上のレースも可能かもしれない。
その同じ伊藤正厩舎のエアシェイディが好位の外から差を詰めて2着。一連の内容からさすがと思わせる連対確保だった。この8歳馬は「この秋の天皇賞を最大の目標にしている」という、あくなき長期展望がある。
たしかにまだ衰えなど感じさせない。8歳馬がAJC杯で2着したのも史上初の快挙である。差のないレースに持ち込んだとはいえ、昨秋の天皇賞はああいう位置取りになった伏兵の善戦はありえることで、あれ以上は…とは思えるが、だからといってベテランの挑戦の姿勢に水を差したりするのは失礼というもので、このあともタフに丈夫に活躍し続けるのだろう。体つきは十分に若い。
伏兵トウショウシロッコはうまく好位の内にもぐりこみ、外に出さずにインから早めのスパート。一旦は2番手に上がりかけたあたり、確実にこういう馬場は合っていた。また、ここへきての充実が本物であることも示したが、残念ながらパンチあと一歩だった。このあとのもう一段の地力強化に期待したい。
人気のドリームジャーニーは、鋭さが身上の小柄馬とあって、この日の馬場ではまったく動けなかった。ふっくら見せてバネを感じさせる素晴らしい状態だったが、ステイゴールドの代表産駒。あまり体つきを良く見せるときは案外…?
この点では父の特徴を受け継いでいるのかもしれない。父はこういう馬場はむしろ得意だったが、こちらは明らかにスピード系に近い。良馬場で見直したい。
武豊騎手に乗り替わってきたアルナスラインは、冬場とあって見栄えはひと息でも全体のムードは決して悪くなかった。4コーナーにさしかかるまでは手ごたえもさして悪くないように見えたが、追って案外。もどかしいレースが続いている。
大型馬のわりにあまりパワフルではないのだろうが、人馬ともにちょっと覇気に乏しかった印象もある。
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