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ダイヤモンドS、きさらぎ賞

  • 2009年02月16日(月) 17時50分
 3400mの「ダイヤモンドS」では、天皇賞・春でも期待できそうな成長株の出現が望まれた。モンテクリスエス(父シンボリクリスエス)のレコード快勝には、そういう期待に全面的に応える中身がありそうに思える。

 人気のフローテーションが途中からレースを先導した流れは明らかにハイペース。特殊な距離なので中身の分析は難しいが、前半の1600m通過は「1分37秒4」。中間の1F「12.3秒」をはさんで、後半1600mは「1分39秒7」。長距離戦にしてはきわめて珍しく前半の方がずっと速い。

 2000m通過2分01秒6。そのあとちょっとペースは落ちたが、3000m通過は3分04秒2だった。うまくタメが利いたグループが上位を独占することになったのは当然だが、スタミナが問われたのも確かで、コースこそ違えモンテクリスエスが先頭に立った3200m地点の時計は「3分16秒1」。今回は流れも53kgの軽ハンデもあったが、天皇賞・春3200mで好走して不思議ないスタミナを示したといえる。

 今年、春の天皇賞には順調にきている有力馬がほとんどいない点でも、かなり強気になれそうだ。遡るファミリーは、かつてアスワンなどが脚光を浴びたことのある一族。これに現代のシンボリクリスエス。開けた展望は大きい。行きたがらない気性も長丁場向きだろう。

 2着したブレーヴハートは7歳馬。今回も先頭に立ったとたんに頭を上げて気を抜き止まりかけるような、全兄レゴラスと同じこの一族の難しい面を出したが、道中の折り合いはピタリ。秘めるスタミナもあった。だからといって次も…という素直なタイプではないが、またそのうち条件さえそろえば快走するだろう。体つきは十分に若い。半兄ローエングリンはもっとベテランになっても不思議なほど頑張った。

 4歳スノークラッシャー、ベンチャーナインの3〜4着好走はこのあとに続くだろう。スノークラッシャーはまだ条件馬であり、ベンチャーナインは今回、望みの展開だったことを考えると理想は2400m前後だろうが、この距離を3分29秒台(従来のレコードを上回る)で乗り切った自信は大きい。

 フローテーションの失速は、さすがにハイペースに持ち込み過ぎと思える。「行きたがってしまった…ルメール騎手」とはいうが、ルメール騎手はハーツクライなどで巧みな先行策も見せてくれる世界のトップ騎手とはいえ、さすがにこんな距離を先行した経験はない(こういう長距離のスピードレースはどこの国にも現在ない)。まして今回は東京コース。ルメール騎手ならあのまま2〜3番手で控えるなどいともたやすいことで、まあ、たまには上手の手から水は漏れることもある。

 注目の「きさらぎ賞」。リーチザクラウンが課題をほぼ半分ぐらいはクリア。クラシックに向けての展望が再び輝きはじめた。

 この相手だから自身でレースの主導権を握る形になり、自分でレースを作るのは仕方がない。ずいぶん行きたがる素振りを見せ、武豊騎手はわざわざ内を大きく空けて他馬の先行を促したが、だれも行く気がまったくないのだから、途中からスロー(1000m通過61.7秒)のマイペース。こうなれば折り合う。1頭になった直線もほとんどよれることなく3.1/2馬身差の独走だった。

 素晴らしいスピード能力に恵まれている。本番まで約2か月。もともと細身に映る脚長の体型とはいえまた馬体重減だったから、おそらくぶっつけ本番だろう。となると、休み明けになる皐月賞でまた行きたがらないだろうか…。クラシックを制するためには自分で主導権を握ってレースを作る形は、本当に歓迎したくないことなのだろうか…。大目標はもちろん「日本ダービー」。皐月賞で突然、控える戦法を取ったりするのだろうか。武豊騎手と陣営の思惑を推理するしかない。

 かくして、今年の牡馬クラシックはさらに盛り上がることになる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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