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フェブラリーS

  • 2009年02月23日(月) 17時41分
 チャンピオンシップにふさわしい激戦が予想された好カードは、期待を大きく上回る素晴らしい内容になった。まさにダート界前半のチャンピオン決定戦だったろう。

 前3年の勝ち馬(すべて7歳)がそろって出走し、対するは今年のドバイWCに出走するカジノドライヴ以下、スケールアップの期待される4歳馬。そこにステップレース根岸Sの5歳世代フェラーリピサ、ヒシカツリーダーが割って入る図式になり、どこまで世代交代が進んでいるのか。この点にも注目が集まった。

 稍重発表のダート。予測された通りエスポワールシチーがペースを作り、レース全体の前後半800mは「47.0-47.6秒」。馬場状態だけでなくもっとも時計の速くなる「バランスラップ」だった。ラップの落ちた部分がなく終始一定にも近い1600mの流れは、高度のスピード能力が問われる。レースの流れ(展開)による紛れが生じにくい。

 結果、上位6着までに入線した馬はみんな上位6番人気に支持された馬によって独占された。GIのマイル戦ではこういう形になることがしばしばあり、07年、ダイワメジャーの勝ったマイルCSの上位がみんな人気上位馬だけだった。

 スピード能力が強調されるレースになると、それは可能性にあふれる「若いグループ有利」もしばしば生じるパターン。勝ったサクセスブロッケンは必ずしも高速のマイル戦向きとも思えなかったが、スムーズに好位の外を追走。最後の競り合い、たたき合いを制したのだから見事というしかない。古馬のトップと連続して戦ってきたこと、なだめて差す形を身につけたことが大きい。さらに相手を見ながら進める外枠もプラスだった。

 しかし、展開(流れ)が味方したわけではない。1分34秒6のレコードは自身の秘める能力がいよいよ前面に出てきた結果だろう。脚部に致命的な死角があり、3歳春に挑戦したダービーでは最後は無理せずあきらめるしかなかったが、素質馬が何頭もあふれている4歳のダート界の中で衆目一致の「ベスト3」に入る馬。

 負担が大きかったので秋まで休む予定とされるが、さらに充実してくれるだろう。脚部の問題は矯正、完治するものではないが、再び芝のビッグレース挑戦もなくはない。

 同じ4歳カジノドライヴが、カネヒキリの猛追をしのいで2着。直線半ば、追い出しを待ったわりに鋭さを欠いたが、これは厳しいレース経験の不足もあり、また、一定ペース型のためとも考えられる。

 しかし、こういう高速ペースを楽に追走できるタイプこそドバイWC向きは明らか。すでに挑戦経験のあるカネヒキリ、ヴァーミリアンに先着したことから、このあとの挑戦が非常に楽しみになった。結果が出そうな予感がする。

 負けたとはいえ、カネヒキリはさすがにチャンピオン。こういう高速決着に持ち込まれて若い4歳勢に一歩及ばずなど、これはもう仕方がない。1800m、2000m級ならまだ総合力でねじ伏せて不思議ないと思わせた。

 緩ませてしまうと、再び強い調教を重ねて立て直すのが大変(脚部不安の再発もありえる)とあって、陣営にしては厳しい出走を課してきた。そのため今後の展望は不明だが、体つきなど他を圧する迫力にあふれている。4歳の2頭に先着こそ許したが、まだチャンピオンの座を譲り渡したわけではない。

 4歳エスポワールシチーは予想通りのケレン味なしの先行策。3コーナー過ぎで1Fでも12秒台にラップを落としたかったが、後続の追走も厳しく、また引きつけて…というスピード型でもないから、逆に4コーナー手前から自身でピッチを上げる作戦に出ている。

 1分34秒8で乗り切って及ばなかったのは、相手が悪かったとしかいいようがない。やや華奢な体型からこういう相手だと「時計の速いダート」が条件になるが、まだ4歳。もう一回り成長してくれるだろう。

 7歳ヴァーミリアンは追い切り日変更が心配されたが、少しもその不安を感じさせない素晴らしい馬体。負けたとはいえ、自身最高の1分35秒1で乗り切りいくらも差はないのだから、カネヒキリとともに別に世代交代を示したわけでもない。1600mはもともと1勝しているだけ。2000m級ならまだまだチャンピオングループから脱落したとはとてもいえない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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