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中山記念

  • 2009年03月02日(月) 17時50分
 お互い手のうちを知り尽くしている組み合わせで、なおかつ少頭数。予想通りのスローペースの展開。ゴール寸前は大接戦に持ち込まれたが、8歳カンパニーがこの中山記念2連勝を飾ると同時に「5年連続」の重賞制覇を達成した。

 お互い相手の能力やその特徴は十分すぎるほど分かっている。こういうレースになると自分の騎乗馬の能力を発揮させるのは当然のこととして、しかし、それだけでは勝てない。相手の持ち味を封じる作戦や、位置取り、またスパートのタイミングこそ重要だった。

 カンパニー(横山典騎手)の最大の勝因は、みんなフワッと出て自然に位置取りが決まりそうになった1コーナーで、気合をつけ2番手にもぐりこむように押し上げたこと。もうひとつは、ペースメーカーとなったキングストレイルの特徴(最近とくに追い出して味がない)を分かっているから、プレッシャーをかけることなくスローで行かせ、自身が壁となって3〜4コーナーでもペースを上げず、最後「11.3-11.8秒」だけの勝負に持ち込んだことにある。

 昨秋の休み明けより体調は良好とはいえ、8歳カンパニーが全盛時より能力アップするはずもなく、自身の能力を出し切るレースに出たというより、相手の能力発揮を封じる作戦大成功。そんな中山記念制覇でもあった。

 2着ドリームジャーニー(池添騎手)は、今回は体が絞れてこの馬としてほぼ理想と思える420kg台になっていた。渋り気味の馬場は決して有利ではなかったが、外を回ることなく早め早めの進出。直線も外には出さず、ガラッと空いたカンパニー、アドマイヤフジの間に突っ込んできた。

 追い込みタイプとはいえ、他馬の末脚が鈍ったところを差すのではなく切れ味の差を生かしたい馬。スローの流れは歓迎だった。道中から馬群の間を通れたあたりは大きな進歩だろう。こちらは5歳馬。今回はカンパニーに屈したとはいえ、このあとの展望は広がった。距離1800mで連対したのは初めて。

 3着アドマイヤフジは、川田騎手自身が悔いたように最初の1コーナーでカンパニーに内から2番手にもぐりこまれてしまったのが痛い。結果、キングストレイルではなくカンパニーにレ−スの流れを支配されてしまった。

 もともとそう切れるタイプではなく、ペースアップのタイミングを当面の相手に握られてしまった不利は大きい。直線、もうこれは川田騎手の流儀で、執拗に相手に馬体を併せに行ったり、後続の進路を狭く絞るようなコース選択はしない騎手(そこが一番いいところ)だから仕方がないが、内のカンパニーと外アドマイヤフジの間は3〜4頭分もあり、そこをドリームジャーニーに衝かれてしまった。中山の内回り1800mだけに見た目以上に大きなロスだったろう。

 キングストレイルは1000m通過61.9秒という望外の楽なマイペース。それも4コーナーまでつつかれずの単騎だった。しかし、並ばれてから頑張ろうとする気力が戻らない。デキは文句なしに近いだろう。不思議な馬になってしまった。

 8歳エアシェイディは、そう差のない5着とはいえ見せ場はなかった。「まだまだ衰えなどない。いまこそ本物になっている」。たしかに体つきは少しも悪くないから相変わらず陣営は強気だが、同じ8歳カンパニーとは逆にレース巧者ではないのだから、相手に上手くレースを作られてしまった場合の凡走はやむをえない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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