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ヤマニンキングリーの取捨

  • 2009年03月10日(火) 15時00分
 先週は中山で弥生賞、阪神でチューリップ賞という3歳クラシックのトライアルが行われました。

 どちらのレースに関しても調教Gメン関係のコラムで明記していた調教タイプとは違った馬が勝ったため、皆様にはご迷惑をお掛けしました。

 そこで今週の当コラムではこれらのレースをじっくりと反省、回顧した上で次走につなげて、今週の競馬に関しては中京で行われる中京記念をたっぷりと検証したいと思います。

 まずトラック調教馬が有利の弥生賞では標準多め坂路のロジユニヴァースが快勝しました。

 有力馬が次々と回避し、最終的には10頭立て。雨の影響も残る馬場で自分から先手を奪ったロジユニヴァースが押し切った形のレース内容でした。

 もちろんこの馬が強かったことは明らかですし、本番で有力な勝ち馬候補であることは間違いありません。

 しかし有力視していたアーリーロブストが今まで同様の先行する競馬をしていればもう少し違った結果も考えられたのではないかと思っています。

 チューリップ賞は坂路有利の予想を標準トラックのブエナビスタが圧勝しました。おまけに2着、3着もトラック調教馬という坂路調教馬が惨敗する結果に終わっています。

 このレースに関しては出走馬の上がり時計にほとんど差がなく、しかも最速がブエナビスタの34.7秒と前年のチューリップ賞と比べても非常に遅いこと影響していると思います。

 つまり速い上がりが出る馬場状態であれば、それだけ坂路調教馬の瞬発力が活かされますが、今年のように速い上がりの決着にならなければトラック調教馬が好走することを学びました。

 問題は約1ヵ月後に同じ舞台で行われる桜花賞です。

 注目は坂路調教馬がブエナビスタにリベンジできるかどうかでしょう。これには芝の状態や時計の出方が大きく影響してくると思いますので、それまでにしっかりと検証して私自身も今回のリベンジができるようにしたいと思います。

 話は今週に替わって、3月14日に行われる中京記念。

 過去5年の1番人気が5着、6着、3着、6着、7着と波乱傾向にあるハンデ重賞です。

 人気馬に信頼が置けない難しいレースに思えますが、調教タイプからはひとつの傾向が見えてきます。それが「レースの前半3Fと調教馬場の関係」です。

 まず過去3年の1〜3着馬の調教馬場とレース前半3Fの数字を記します。

2006年
1着マチカネオーラ/併用
2着ローゼンクロイツ/坂路
3着エアシェイディ/併用
→レース前半3F33.5秒

2007年
1着ローゼンクロイツ/坂路
2着シルクネクサス/坂路
3着フォルテベリーニ/坂路
→レース前半3F33.7秒

2008年
1着タスカータソルテ/併用
2着センカク/トラック
3着ワイルドファイアー/トラック
→レース前半3F34.8秒

 2006年と2007年が33秒台のテンの入りに対して、昨年は34.8秒と例年に比べて非常に遅いテンの入りになっていました。

 また調教馬場はテンの速かった2年が併用と坂路が目立つのに対して、テンが遅かった昨年は全く人気のないトラック調教馬が好走しています。

 しかし、レースの前半3Fの数字を予測するのは難しいですよね。

 そこでゲートが開くまでに使えるファクターで今年有利になる調教馬場が分かる方法があります。それが「1番人気の調教馬場」です。

 この中京記念の大きな特徴は1番人気が早く動くために直線で大勢が一変すること。

 例えば2007年の1番人気だった併用調教馬トウショウパワーズは道中で徐々に位置取りを上げて仕掛けていますが、これを見て同じ併用調教馬やトラック調教馬は動いていきます。

 しかし結果的にはこの仕掛けが早いため、坂路調教馬に差されてしまいます。

 また2008年の1番人気ローゼンクロイツは坂路調教馬でしたが、こちらは4コーナー先頭というかなり早い仕掛けをして、同じ坂路調教馬がまくりに参加しました。

 その結果、トラック調教馬が差してきたわけです。

 これらはレース前半の3Fにも大きく影響していて、トラック調教馬が人気するとテンから早目の仕掛けで道中が速くなり、じっくり構えていた坂路調教馬が差してくる「2007年型」の競馬になります。

 また坂路調教馬が人気になるとテンからは前に行けないため、前半3Fは遅くなりますが、3コーナー手前からまくり合うような競馬になって、直線では坂路調教馬のスタミナゲージが空になってしまっているためにトラック調教馬が先着するということです。

 今年の1番人気は重賞で安定した成績を残しているヤマニンキングリーが濃厚。同じ舞台で行われた中日新聞杯で好走していることも人気の要因になるでしょう。

 その中日新聞杯はテン3Fが35.4秒と非常に遅く、トラック調教馬のヤマニンキングリーにとっては調教適性十分の流れになりました。

 しかし今回はそれほどテン3Fが緩くなるようなメンバー構成でもなさそうですから、直線伸び切れないヤマニンキングリーに坂路調教馬が差し切りを決めてくれるのではないでしょうか。


調教Gメンとは?
 調教をスポーツ科学的に分析した適性理論。それぞれのコースに必要な無酸素運動と有酸素運動の量やバランスを見極め、それに最も適した調教をしている馬を狙う馬券術。競馬新聞の調教欄に記載されている調教場所、調教本数、脚色(例:一杯)を確認するだけでOK。

調教コース&調教タイプの考え方
 調教コースが「坂路」、調教タイプが「一杯平均」の馬は「一杯平均坂路」に分類される。

調教コース一覧
【トラック】 ウッド、芝、ダートでの調教の本数が全体の8割以上の場合。有酸素運動の強化。
【坂路】 坂路での調教の本数が全体の8割以上の場合。無酸素運動の強化。
【併用】 トラックと坂路の併用で、どちらかの調教本数が全体の3割以上の場合。有無酸素をバランス良く強化。
【トラック主体】 トラックと坂路の併用で、坂路調教の本数が全体の2割以上3割未満の場合。有酸素運動寄り。
【坂路主体】 トラックと坂路の併用で、トラック調教の本数が全体の2割以上3割未満の場合。無酸素運動寄り。

調教タイプ一覧&イメージ図
調教タイプ一覧&イメージ図

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 どのコースで何本追い切っているか、好走時、凡走時の調教過程など、過去の調教パターンを比較することで、各馬の仕上がり具合をチェックすることできます。また、直前の追い切りパターンとレース結果と参照することで、今の馬場状態では坂路調教馬が有利、もしくはコース調教馬が有利など、調教タイプでの馬券検討が可能になります。この機会に是非、調教タイムを使ったレース検討の面白さを実感してください。

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調教をスポーツ科学的に分析した適性理論「調教Gメン」を操る調教捜査官。著書に「調教Gメン-調教欄だけで荒稼ぎできる競馬必勝法」「調教師白井寿昭G1勝利の方程式」「100%激走する勝負調教、鉄板の仕上げ-馬の調子、厩舎の勝負気配は調教欄ですべてわかる」など。また「Beginners room」では競馬ビギナー向けに教鞭をふるう。 関連サイト:井内利彰ブログ

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