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フィリーズレビュー

  • 2009年03月16日(月) 17時50分
「中山牝馬S」も見どころの多いレースだったが、引退するキストゥヘヴンが横山典弘騎手の巧みな騎乗で快勝。2着ピンクカメオに復活の兆しが見えたのは明るいが、3着に突っ込んだダンスオールナイトも引退を前にしての好走。これはもうただ上位馬を讃えるしかなく、今後のレースにはあまり結びつかないと思えるので、振り返りたいのは桜花賞のステップ「フィリーズレビュー」阪神1400m。

 伏兵ラヴェリータが外枠からレースを引っ張る形になり、同馬の作った流れは「前半600m34.3-800m46.3-1000m通過58.5秒……」。ここは1400mとはいえ本番桜花賞で予測されるペースとほぼ同じだった。一連のステップにスローペースのレースが多い今年、とくに最大のポイントレースと考えられるチューリップ賞(1600m)が「前半800m48.6-1000m61.3秒……」という超のつくスローで、勝ったブエナビスタ以外の評価は非常に難しいから、このレースはいつもの年以上に桜花賞の重要なカギを握るトライアルと考えられる。

 ハナを切ったラヴェリータは2走前のダート1400m(重馬場)とほとんど同一のペース。芝なら時計短縮は十分可能と大いに期待したが、不思議にも走破タイムはダート1400mとまったく同じ1分23秒5。とくにバテたわけでもないが、残念ながらペースメーカーに終わってしまった。まだこれから上昇するとは思えるが…。

 しかし、ラヴェリータがそれなりのペースで飛ばしたことにより、秘める能力が引き出された馬がいた。1000m通過58.5秒のあと、レース後半の2Fも「12.0-11.9秒」。追走してインから抜け出したワンカラットの末脚は少しも鈍ることなく、最後の1Fを11秒台でフィニッシュして1分22秒4。例年より全体に時計がかかっている芝を考えるとこの記録は侮れない。

 11月のファンタジーSでも馬群の内から突っ込んでいたから、これが必殺パターンなのだろう。非力型ではなくパワーの裏付けがある。父ファルブラヴ(ジャパンC勝ち馬)は海外での供用が多く、この世代は持ち込み馬となるが、母バルドウィナ(その父はサンクルー大賞典などのピストレブルー)のファミリーもフランス色の濃い中距離タイプを多く送っている。決してフロックではない。怖い新星出現としたい。

 これには、4着ミクロコスモスが取りこぼしの凡走だったのか。それとも能力通り(阪神JF・0.6秒差3着)だったのか、がポイントになる。ミクロコスモスは速い時計の求められる1400mや1600mは必ずしも合ってはいないところが、先を思わせるネオユニヴァース産駒の長所だろうと思われる。

 今回は阪神JF・3着の成績(実際には完敗だった)と、クイーンCでの直線の不利(ロス)が強調されて人気の中心となったが、そのクイーンC、脚があれば抜け出すタイミングもスペースもあった。でも自身が伸びを欠いたから狭くなりいかにも不利を受けたように見えてしまったのではないか。そんな厳しい見解の方を支持したい。

 つまり、ミクロコスモスは今回の距離に限れば、案外、能力通りの結果だった可能性が高いのではないかと。同馬はまだ抽選で桜花賞に出走できるチャンスは残っているものの、ワンカラット、さらには2着アイアムカミノマゴに(ひとまず)評価のランク上位を譲ったと考えたい。

 アイアムカミノマゴが差す形を取れたのは紅梅Sに続いて2度目。ワンカラットと同様の理由で今回のレース内容は高く評価されていい。中間、好調教をみせつつ今回はまた馬体重が増えていたのも本番に向けて強気になれる材料だろう。1600mにもまったく距離の不安はない。

 レディルージュも桜花賞で予測されるのと同じペースを追走し、大きくバテることなくミクロコスモスには3.1/2馬身も先着。阪神JFの失速で大きく評価を下げていたが、この馬は全体に少し時計のかかる芝向きだった。1〜2着馬とはゴール前の勢いの差を感じさせたが、チューリップ賞の2〜3着馬よりランクが下とはいえない。

 土曜日の中山「アネモネS」を鮮やかに抜け出し、再び路線に乗ってきたツーデイズノーチスも合わせ、評価No.1のブエナビスタに続く候補は2〜3週前とは大きく異なり、ここにきて好内容のレースを示したグループに移りつつあるように思える。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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