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6年連続で坂路調教馬が勝つ

  • 2009年04月28日(火) 12時25分
 先週の当コラムで検証した福島牝馬SとアンタレスSでした。

 アンタレスSでは1番人気ワンダースピードが標準多め併用で仕上げたため、1番人気の連敗をストップさせると思いましたが、レコード決着の馬場に2着が精一杯。

 当コラムでも何度も書いていますが、速い時計が出るような馬場になると、スピード能力の高い馬が好走しやすくなります。よって調教適性による好走の可能性が半減してしまうのです。

 福島牝馬Sでは過去の好走調教傾向に該当していたプロヴィナージュが出走せず、「標準併用」でレース週追い切りが「馬なり」はヤマニンメルベイユが該当馬でした。

 58kgは牡馬換算で60kgという超酷量。しかも雨馬場ということで、なかば諦めムードで◎を打ちましたが、恐るべし調教適性。3着に踏ん張って複勝1170円の高配当でした。

 重賞のように下級クラスに比べて、個々の能力差が少ないと思われるレースになればなるほど「過去5年の調教傾向」と合致した馬は好走します。ですから今週の青葉賞もこの調子で穴馬を見つけ出したと思います。

 では早速、過去5年の1〜3着馬の調教タイプを振り返りましょう。

2004年
1着 ハイアーゲーム(2人)/標準多め坂路
2着 ホオキパウェーブ(5人)/馬ナリ平均トラック
3着 シェルゲーム(1人)/乗込併用

2005年
1着 ダンツキッチョウ(1人)/標準坂路
2着 ニシノドコマデモ(6人)/標準多め併用
3着 ブレーヴハート(2人)/標準併用

2006年
1着 アドマイヤメイン(1人)/標準坂路
2着 マイネルアラバンサ(5人)/標準トラック
3着 エイシンテンリュー(4人)/標準トラック主体

2007年
1着 ヒラボクロイヤル(3人)/標準併用
2着 トーセンマーチ(15人)/標準多め併用
3着 フィニステール(6人)/標準坂路主体

2008年
1着 アドマイヤコマンド(2人)/標準多め坂路
2着 クリスタルウイング(7人)/標準多め併用
3着 モンテクリスエス(6人)/標準多め坂路


 気付いていただけるとは15番人気2着トーセンマーチの存在が光る「標準多め併用」ですよね。この調教タイプは過去5年で6頭の出走しかありませんでしたが、[0-3-0-3]と連対率50%。その複勝回収率が517%ですから、いかに穴馬が好走しているか分かります。

 現時点で今年の出走予定馬にこの調教タイプに該当しそうなのはスマートタイタン、そして1勝馬ということで出走が微妙なテスタマッタです。しかし過去に好走した標準多め併用の間隔は最低でも中4週空いていました。中1週と強行軍になる上記2頭は少々厳しい条件かも知れません。

 と、ここまで調べたところで「今年の青葉賞は堅く収まるのかも」と思い、勝ち馬だけに注目しました。やはり1番人気から3番人気までで決まっています。しかしここで気付いたのは坂路調教馬の強烈な強さ。過去5年の勝ち馬はすべて坂路調教馬だったのです。

 ちなみに1〜3番人気に推された坂路調教馬で好走できなかったのは乗込坂路の3番人気ニューヨークカフェ(05年-13着)と急仕上げ坂路の1番人気オーシャンエイプス(07年-7着)だけ。馬なりばかりの調教、本数が少ない調教でなければ、坂路調教馬が中心。

 特に今年の上位人気を占めるのはトラック単一調教馬ばかりですから、坂路調教馬で最上位に支持されるのはトップカミングでしょう。使いつつ坂路での追い切り時計が詰まっている傾向は、攻め駆けすると走るようになるゴールドアリュール産駒の良い傾向ですし、今週の坂路でしっかり動ければ重賞初制覇も見えてきます。

 最後に、天皇賞春が行われる京都芝について簡単に先週を回顧しておきましょう。

 京都は1日目、2日目ともに雨の影響があり、調教適性で予想するには非常に難しい馬場でした。特に京都の芝は雨が降って時計が遅くなると、一杯平均トラックが好走する傾向があります。ムーニーバレーRC賞を勝ったデルフォイはその典型例でしょう。

 しかし馬場が回復してくれば「標準多め坂路」が活躍するはずです。その根拠は過去の当コラムにあります。重複になりますが、大切なことなので当時のコラムから抜粋させていただきます。


 『大荒れとなったのが6日目の京都芝外まわり。8Rは15番人気のシャイニーボーイが逃げ切りを決めて単勝8430円。そしてメインレースの都大路Sではフサイチアウステルが逃げ切りを決めて単勝11520円。どちらも脚質が逃げという共通点がありましたが、これはゲートが開くまでは分からないこと。しかし戦前に調教タイプで共通していたことが「坂路で本数多く調教されていた」という点です。

 この調教タイプが好走した要因は、5日目に雨が降り、非常に時計が掛かる馬場に変化したことにあります。時計比較として分かりやすいのが芝1600mで行われた4日目の4歳上500万下と6日目の都大路S。クラスの差は歴然としていますが、勝ち時計は1分35秒2と1分35秒1で、コンマ1秒の違いしかありませんでした。それぞれのレースには坂路で本数多く調教した馬が出走していましたが、4歳上500万下には3頭出走してすべて14着以下の大惨敗(うち5番人気1頭)。都大路Sにも同じく3頭出走していましたが、1着、2着、5着とまるで正反対の結果となったわけです。』

2008年05月13日分より抜粋


 当時は馬場状態が良好で時計が出るために本数多い調教タイプが好走できなかったけど、雨によって馬場が荒れ、本数多い調教タイプの馬が好走したとまとめています。

 先週のようにレース中に雨が降る状態ではなく、雨競馬で適度に馬場が荒れると「標準多め坂路」が好走できるということです。



調教Gメンとは?
 調教をスポーツ科学的に分析した適性理論。それぞれのコースに必要な無酸素運動と有酸素運動の量やバランスを見極め、それに最も適した調教をしている馬を狙う馬券術。競馬新聞の調教欄に記載されている調教場所、調教本数、脚色(例:一杯)を確認するだけでOK。

調教コース&調教タイプの考え方
 調教コースが「坂路」、調教タイプが「一杯平均」の馬は「一杯平均坂路」に分類される。

調教コース一覧
【トラック】 ウッド、芝、ダートでの調教の本数が全体の8割以上の場合。有酸素運動の強化。
【坂路】 坂路での調教の本数が全体の8割以上の場合。無酸素運動の強化。
【併用】 トラックと坂路の併用で、どちらかの調教本数が全体の3割以上の場合。有無酸素をバランス良く強化。
【トラック主体】 トラックと坂路の併用で、坂路調教の本数が全体の2割以上3割未満の場合。有酸素運動寄り。
【坂路主体】 トラックと坂路の併用で、トラック調教の本数が全体の2割以上3割未満の場合。無酸素運動寄り。

調教タイプ一覧&イメージ図
調教タイプ一覧&イメージ図

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 どのコースで何本追い切っているか、好走時、凡走時の調教過程など、過去の調教パターンを比較することで、各馬の仕上がり具合をチェックすることできます。また、直前の追い切りパターンとレース結果と参照することで、今の馬場状態では坂路調教馬が有利、もしくはコース調教馬が有利など、調教タイプでの馬券検討が可能になります。この機会に是非、調教タイムを使ったレース検討の面白さを実感してください。

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調教をスポーツ科学的に分析した適性理論「調教Gメン」を操る調教捜査官。著書に「調教Gメン-調教欄だけで荒稼ぎできる競馬必勝法」「調教師白井寿昭G1勝利の方程式」「100%激走する勝負調教、鉄板の仕上げ-馬の調子、厩舎の勝負気配は調教欄ですべてわかる」など。また「Beginners room」では競馬ビギナー向けに教鞭をふるう。 関連サイト:井内利彰ブログ

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