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東京新聞杯

  • 2010年02月01日(月) 17時50分
 GIII重賞が3つも行われた。4歳グロリアスノア(父プリサイスエンド)が勝ってフェブラリーSに展望を広げた「根岸S」も、同じく4歳牝馬ヒカルアマランサス(父アグネスタキオン)が上がり馬の勢いを爆発させた「京都牝馬S」も見どころ十分だったが、このあとの春のビッグレースシーズンにもっとも大きく関係しそうなのは、GIII「東京新聞杯」1600mと思える。

 真冬とは思えない絶好の芝コンディションに恵まれ、「安田記念」並みの速い時計が記録された。1分32秒1はレースレコードを0.6秒も更新。コースレコードとわずか0.1秒差だった。時計は馬場コンディションに大きく左右されるから、必ずしもレースレベルと一致しないが、この芝1600mには、11月のGI「マイルCS」からマイネルファルケを筆頭に「2、5、6、9、14着」馬が出走していた。

 その5頭、たまたまの偶然も否定できないが、それぞれ着順を少しずつ下げて入線の順番はそっくり同じ。「4、6、7、13、14着」だったのである。

 馬場差を考慮すると、マイネルファルケが先導した前半1000m通過「58.2秒…」の流れは、同馬が逃げて粘ったマイルCSの前半「58.7秒…」のペースとさして差はない。2つのレースの前後半のバランスは東京新聞杯が「46.6-45.5秒」。マイルCSのそれは「47.2-46.0秒」だから、前後半の差はともに1.1〜1.2秒。同じようなバランスの、1600mとすればスローに近いペースだったが、小回りコースではないから「流れ(ペース)による波乱、破綻」の生じる部分は少なかったろう。だから前出の5頭、まったく同じ順番の入線だったともいえる。

 カンパニーと同じようにマイネルファルケを楽々とかわして勝ったのは、4歳レッドスパーダ。2着に押し上げたのも4歳トライアンフマーチ。ベテランホースのがんばりが続き、ウオッカ、カンパニーなどがリードした「マイル路線」には新しいチャンピオンの台頭が期待されていた。近年のレースレベル上昇に目覚ましいものがあるとされる「東京新聞杯」で、楽しみあふれる新勢力の台頭が実現したのである。

 レッドスパーダの、父タイキシャトル、母の父ストームキャットという組み合わせはメイショウボーラーと同じ配合パターン。追って切れるスピード系というより、速い流れに乗って抜け出してくるマイラーを連想させるが、レッドスパーダはまさにその通り。藤沢厩舎の歴史に残るエース=タイキシャトルの代表産駒に育って欲しい。おそらく芝もダートも問わないだろうから「同じ1600mのフェブラリーSに出走のプラン」もあるらしい。アグネスデジタル型を目ざすのも素晴らしいことである。

 ウオッカはドバイでオールウェザートラックに挑み、フェブラリーSにはリーチザクラウン、スーパーホーネット…などの出走も予定されている。ダートなら、芝なら…の時代から、「ダートでも、芝でも、オールウェザートラックでも…」の時代が確実に訪れつつある。

 距離のカベを問わないのがスーパーホースなら、コースの違いを楽々とクリアするのも理想のミラクルホースの条件であり、いま「限定のつく」種牡馬は、よほど卓越したスペシャリストでない限りは評価されにくくなっている。

 2着トライアンフマーチ(父スペシャルウィーク)は、また一段と迫力あふれる体つきに育ってきた。表に出てきた特性はもうはっきり母キョウエイマーチ寄りのマイラーだろう。返し馬でほかの馬を蹴りに出るような仕草も見せるくらい闘志が前面に出てきた。今回は続けてのマイル戦出走とあって、行き脚がつきすぎたようにも映ったが、内をすくわれる形になったエーシンフォワードを差し返して伸びた。レッドスパーダと「いいライバル」に育つことだろう。5歳エーシンフォワードも充実著しく、GIII重賞ならすぐにもチャンスが訪れるだろう。たまたま今回は相手が悪かった。

 先行馬の止まらない流れと馬場状態を考慮すると、差し一手のアブソリュート、スマイルジャック(またまた馬群に詰まる不利)など、先に行った馬に1分32秒台前半で乗り切られたから今回の凡走はやむをえないが、同時にマイラーとしてGI級に育つかどうかのレベル差も感じさせた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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