今年のダービー。日本ではこれまであまり調教師の手法や流儀は表面に出ることはなかったが、きわめて対照的な2人のトレーナーの育てた馬が有力馬になった点で、注目度が高まっている。
タニノギムレットの松田国英師は、この強気なローテーションが示すように、目標のレースを設定し、かなりハードに鍛える手法。きびしいレースを重ねることで才能に磨きをかけようとしている。あえてNHKマイルC出走は、プラスと出るか、これまでの多くの馬のようにマイナスになるか、非常に難しいところだ。クラシックを制するにはある程度の犠牲をはらわなければならない。この手法は決して悪くない。
一方、シンボリクリスエス、サスガなど計4頭も出走させる藤沢和雄師は、これまでクラシックと無縁だった。それも当然、目標のレースを定めてビシビシ鍛える手法を良しとしていないからだ。入念な運動量で少しずつ素質開花をうながし、古馬になって完成されるような馬を育てるのが流儀だった。
ところが、手法をとくに変えたわけでもないが、ここ2〜3年、クラシック制覇にも意欲をみせ、3歳の初期から続けて出走させることが多くなってきた。シンボリクリスエス、サスガ、マチカネアカツキなど再三騎手を変え、間に合うものならクラシックへの形をとってきた。
いまピークを迎えた馬という点で、シンボリクリスエスが注目馬。初めての強敵相手は目に見えない死角だが、前走、2400mを楽々と2分26秒4(上がり34.1秒)で乗り切っている。あの内容なら2分25秒台前半の能力がありそうだ。
あと注目は、安藤勝、石崎、デザーモが乗ってきた。騎手の腕を大きな要素と考えるなら、この3人の馬は軽視できない。