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共同通信杯

  • 2010年02月08日(月) 17時50分
 スピードタイプの先行型がいなかったため、前半「36.2-49.0-61.6秒…」のスローな流れ。2番手のハンソデバンドも、直後に位置したアリゼオも最初はかなり行きたがった。しかし、スローは組み合わせから予測されたことでもあり、著しく折り合いを欠くというほどではなかったから、ロスはあったにせよ許容範囲だろう。ダッシュ一歩のダノンシャンティも当然折り合いを欠きかけたが、外には回らず馬込みに入れてなだめることに徹し、勝負は最後の直線。

 このスローだから、ピッチの上がった4コーナー手前からの後半3Fは「11.7-11.2-11.3秒」。そこに至るまではみんな楽にきている。したがって、実際には高速ラップの刻まれた最後の2F(400m)に集約される勝負だったろう。こういうレースになると切れ味の優劣とか、爆発力うんぬんではなく、多くのケースで秘める能力や、やがてもっと広がる可能性の「差」が如実に現れる、とされる。

 「ハナ、クビ」の微差で人気の3頭がゴール寸前までせめぎ合い、同じような位置にいて残り400mまでは楽にきた4着ダイワアセット以下は、前の3頭から明確な差が生じて「2馬身差以上…」。スローだからこそ、究極ラップの刻まれたゴール前400mの勝負で秘める可能性の差が見えたかもしれない。これはあくまで、これから同じような距離のレースを展望するライバル同士の資質を見極めようという視点で、1つの手がかりにすぎないが、今回はその見方がほぼ当てはまりそうに思える。

 スパートを待っていたハンソデバンド(父マンハッタンカフェ)の最後は、レースラップと同様の「11.2-11.3」秒。ゴール寸前、ダノンシャンティに追い詰められたため、からくも「しのぎ切った」印象は免れないが、これで3連勝。道中ずっとライバルの目標になりつつ、とうとう粘り通したのだから勝負強い。ランクの位置は難しいが、これで候補10頭の中には入ってきただろう。ただし、陣営は慎重でマイル路線か、クラシック路線かまだ決定はしていないらしい。

 1番人気のアリゼオ(父シンボリクリスエス)は、確かに前半かなり行きたがってはいたが、ハンソデバンドをぴたっとマークする3〜4番手。ハンソデバンドに並びかけようとしたあたりまでは楽な脚さばきにみえたが、いざ追い出すと案外。ルメール騎手はハンソデバンドに馬体を併せに行こうとしたが、ゴール寸前は苦しくなったためか逆に外からきたダノンシャンティの方によれてしまった。父シンボリクリスエスも3歳春、2勝目を挙げるまでに「2着、3着、3着」を重ねた。それほどスパッと切れる脚はなく、また、完成されるのが早いわけでもないから、スローの上がり勝負はあまり得意ではないのだろう。だが、ここで無敗の3連勝とでもなれば一段と高まるはずだった評価は、候補ランキングの中団のまま評価持ち越し。「もう一度この次のレースを見てみよう」となりそうである。条件賞金は1200万のまま。当然、まだ加算しなければならない。

 あと一歩だったダノンシャンティ(父フジキセキ)。最後の2Fくらいに集約されるレースだったから、上がり3Fの33.5秒はこのメンバーではNO、1という程度にとどまるが、「11.2-11.3」秒の直線でハンソデバンドをハナ差まで追い詰めた。このあとに広がる可能性は一番だろう。ゴール寸前の印象だけではなく、松田国英調教師が公言していた「10秒台の脚を2F連続して使える」を、実際にレースで実現させてみせた。日本ではあまり牡馬クラシックタイプとはされないフジキセキ産駒だが、早くも松田国英厩舎特有のいかつい筋肉マン型に見せている。決して寸詰まり体型ではないから距離の幅は広いだろう。母シャンソネット(その父マークオブエスティームはミルリーフ直系)は、グローリアスソング産駒。グランドオペラ、ラーイ、シングスピールなどの半妹になる。現代ふうにヘイローの3×3。1勝馬で重賞2着だから、まだまだ賞金は不足。この次のレースが非常に楽しみになった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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