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きさらぎ賞・ダイヤモンドS

  • 2010年02月15日(月) 18時00分
 人気の中心レーヴドリアンが差しタイプだったこと、これに先行のスピード型に有力馬がいなかったことも重なって予測された通りの落ち着いた流れ。また、開催の連続している京都の芝はそう時計は速くならないから、09年リーチザクラウン、07年アサクサキングスなどと同じ1分48秒台後半の勝ち時計は、最近の「きさらぎ賞」とすると決して遅くはない。標準レベルのステップレースだったと思える。

 昇り調子とデムーロ騎手の巧みなコース取りによって[2-3-0-0]となったネオヴァンドーム、あと一歩及ばなかったものの[2-1-1-0]となったレーヴドリアンの2頭が賞金を加算し、クラシック出走当確圏内に入った。

 勝ったネオヴァンドームは、2003年の勝ち馬ネオユニヴァース(このレースまでは福永騎手が主戦)との父子制覇を達成した。過程は少々異なるが、とくに目を引く強烈な切れ味が武器ではないものの接戦になって勝負強いこと、また、まず大崩れしないレース内容、きさらぎ賞の勝ち時計が必ずしも光るものではないからこの時点ではそうは高い評価を得ないことなど、父ネオユニヴァースの台頭した過程とかなり似た部分がある。コースロスなく内寄りに進路を取って狭いところから抜けてきたレース運びなど、デムーロ騎手とのコンビが成立してからのネオユニヴァースを彷彿させるものがあった。

 ネオヴァンドームは、少しタイムを要する馬場なら一段と勝負強さが生きるに違いないと思わせるあたり、父ネオユニヴァースの最大の長所を全面的に受け継いでいる可能性が高い。本番では、短期免許の日程をクラシックに合わせて騎乗を希望するデムーロ騎手とのコンビが続く公算が大きくなった。

 レーヴドリアンは早めに進出した福寿草特別とは違って、最初から控える作戦だった。今回を含め4戦すべて出走馬中No.1の上がり3Fが示す「切れ味」を最大限に生かすためか、2000mを連続3戦したあとなのでリズムを崩してまで前につけることを嫌ったためなのか、スローは読めているだけにある意味かなり大胆な作戦だった。4コーナーを回って直線、この馬だけ馬群から大きく離れた外に回っている。

 その直線の伸び脚は確かにさすがだった。外で1頭だけになりながら、内寄りを衝いて一気に抜け出したネオヴァンドームをクビ差まで追いつめている。負けてなお強し(中身はある)だろう。ただ、ずっと最初からコンビの藤岡佑介騎手。ここは確勝と、たちまち訪れるだろう18頭立てのクラシック本番を想定してのイメージが主テーマだった。この相手でスロー必至の展開を考えると、あそこまで控える作戦が正解だったかどうか、負けても賞金を加算できたからいいが、今後のレース運びに課題を残した気がする。

 ここが2戦目になるインペリアルマーチは、こういう日程になっただけにとりあえず勝ちに出て、2勝目を狙うしかなかった。流れに乗って先行、一度は先頭に並びかける場面もあったが、いざ追いだして案外。また増えて556kgの馬体は太め残りというより、ビシビシ追って仕上げるには脚元をはじめまだ課題が多過ぎるのだろう。


 「ダイヤモンドS」は、昨年後半から上昇カーブを描き始めた注目のフォゲッタブルの順当勝ち。途中で動いてスタミナをロスする危険を避け、慎重にスパートのタイミングを計った武豊騎手らしい好騎乗が光った、昨秋からのローテーションはきつくなっているが、この充実ぶりはさすがエアグルーヴ産駒。このメンバーの中ではただ1頭、天皇賞・春を展望できる位置、さらには有力候補の立場に浮上した。当面の相手があまりに凡走しすぎたから、手ごたえを確かなものにするためには天皇賞.春の前にもう1戦、阪神大賞典で父ダンスインザダーク譲りのスタミナを確認することになる。ライバルとみられたヒカルカザブエは直線のストライドが乱れて失速し(入線後、疲労が激しかったこともあって横山典騎手が帰る途中で下馬)、モンテクリスエスはレース前には大丈夫と思えたが、自身でスタミナをロスしがちな立派な体形になりすぎたかもしれない。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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