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秘めたる執念

  • 2002年05月30日(木) 00時00分
 私は新聞を全部保存しているので、皆さんがどんな予想をしたのか確認をさせてもらいます。ダービーが終って、言動には気をつけなければならないという教訓を得ましたと、タニノギムレットの松田国英調教師は、とつとつと語って合同記者会見を切り上げていました。

 どれほど、ダービー優勝への執念を抱いておられたことか、穏やかな表情の内に秘めていたものを、強烈に感じました。

 大レースの後には、勝利した騎手、調教師さんへの代表質問をさせてもらっています。

 取材者がどんな点に注目し、どんな点について聞いてほしいかを集約してインタビューマイクを向けなければなりません。

 翌日、それぞれの新聞を見て、この合同会見の中の、どんなやりとりに注目していたかがわかります。記者それぞれの思いを通し、語られた言葉をピックアップして、それなりにまとめられています。当然、こちらの思惑とは異なるものもあるのですが、冒頭の松田調教師の言葉をストレートに取り上げたものは少なかったようでした。

 ダービーにはダービーの傾向があって、そこをベースに、その勝ち馬を探っていくという展望からは、皐月賞、NHKマイルCという戦い方は、かなり厳しいものという見解は成り立ちます。多くが、自信を持った本命には推していなかったのは仕方のないことだったでしょう。

 一方、戦いに送り出す当事者は、だからこそ、一段と強い信念を抱いてその日に立ち向っていくのです。その思いの差は、大きくなるばかりでした。

 冒頭の松田調教師の言葉に、でも、世論はタニノギムレットでしたねと結び、心からその勝利を祝福させてもらったのですが、果して、この気持が通じたのかどうか。競馬のむずかしさが、またしても心に残りました。でも、来年以降のダービーに楽しみが。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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