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高松宮記念

  • 2010年03月29日(月) 18時00分
 コース形態を大きく変えることになる中京競馬場の最後の重賞レースは、「ハナ、クビ、クビ、ハナ…差」の大接戦で終了した。例年より開催の連続した最終日のため、勝ち時計は「1分08秒6」。全体に時計を要するコンディションだったこと。また、そう極端な前傾ラップにはならなかったことにより(33.5-35.1秒)、総合力で上回る実力馬が上位を独占する形になった。人気は大きく割れたが、現コースの最後のGIにふさわしい高松宮記念だったろう。

 キンシャサノキセキ(父フジキセキ)は、08年のこのレースはクビ差2着(1分07秒1)に惜敗したが、6歳後半から心身ともにスケールアップ。折り合い難は解消。直前の調教を控えめにして体調キープに苦心していた4〜5歳時の危うさが消えた。これで重賞4連勝となると同時にGIホース。前々走の阪神C1400mは出負けし、途中から強引に進出しながら直線も伸びて1分20秒4。前回のオーシャンSでは重馬場で馬群が固まった中、内をこじ開けて伸び1200m1分09秒8。そして今回は好位追走から早めに抜け出す正攻法でGI制覇。まず崩れなくなっている。

 サンデーサイレンス初年度の産駒フジキセキは、後継種牡馬として大成功しながら、なぜかGIホースを送ることの少ない不思議な種牡馬とされた時期もあったが、カネヒキリ、海外GI勝ち馬サンクラシークの登場したあたりから評価一変。母の父として登場するころになって、自身の直仔のGIレースでの活躍も目立ってきた。元はといえば軽快なスピード型だけを送る配合の種牡馬ではない背景がある(牝系はミルリーフの一族)。キンシャサノキセキの7歳になってのGI制覇は、父フジキセキの評価を改めて上昇させることになった。

 2着ビービーガルダンは昨秋のスプリンターズSに続き、また「ハナ差」負け。一番の好スタートから好位でなだめて先行。4コーナーでは懸念の左回りのためか後退しかかるようなシーンもあったが、最後は抜け出したキンシャサノキセキを差し切るかの勢いで伸びてきた。例年、これから調子を上げるのがパターン。距離も1400mくらいまでは平気だから、左回りOKとなった今季は東京での出走もありえる。

 3着エーシンフォワードは、結果的には外を回されることになったコースロスが大きかったとはいえるが、慣れない1200m。全体に時計のかかるコンディションが味方したのも確かで、この3着は現在の充実ぶりをフルに発揮しての好走だろう。当然このあとは京王杯SC→安田記念の路線を展望することになる。

 惜しかったのは4着サンカルロと、アルティマトゥーレ。サンカルロはなだめての追走になったが、3コーナー過ぎから難しいコース選択にちょっと迷ったシーンもあった。直線もこの多頭数だから前に進路の探しにくい場面があり、スムーズだったら……。ちょっと惜しいメンバー中最速の上がり3F34.1秒だったろう。エーシンフォワードと同じ路線で巻き返したい。

 ここが最後の一戦になるアルティマトゥーレはスタート直後、大きくつまずいいてしまった。一瞬、先頭に並びかけるほどの伸びを見せたが、寸前での失速は馬場の荒れている内を通っての追い上げに脚を使ったためだろう。伏兵プレミアムボックスも出負けのロス。どのみち後方追走の直線強襲型とはいえ、早めに馬群に取りつくために脚を使ったうえ、3コーナー過ぎからスパート開始せざるを得ない流れは苦しかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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