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フローラS

  • 2010年04月26日(月) 18時00分
 2000年から「桜花賞」と中1週になり、桜花賞組の出走がほとんどなくなったこの2000mのトライアルは、距離を重視したグループ、遅れて台頭のグループが中心のトライアルになった。しかし、ここをステップに「オークス」で3着以内に好走したのは,日程変更後の10年間で『01年レディパステル(本番1着)=ローズバド(2着)、03年シンコールビー(3着)、05年ディアデラノビア(3着)、07年ベッラレイア(本番2着)』の5頭にとどまり、連対馬は3頭のみ。

 オークスを目ざす路線は確かでも、この10年間、オークスで3着以内に好走した30頭のうち「22頭」までが、桜花賞からの直行グループによって占められていることを考えると、出走権を賭ける2番手グループの色彩は否定できない。

 ただし、今年の人気の2頭は、サンテミリオン(前走、多分に不本意なレース内容でオウケンサクラと小差)と、ブルーミングアレー(アパパネ、牡馬エイシンフラッシュと好勝負)。ほかに12月の阪神JFを小差3着のベストクルーズもいて、必ずしも2番手グループとはいえない注目レースだった。

 そのサンテミリオンが2分00秒2で快勝し、ブルーミングアレーも必死に出走権確保の3着。時計の2分00秒2(前半60.6=後半59.6秒)は改修後のレースレコードだから、今年のメンバーは桜花賞上位グループとさして差がない勢力図の中の位置を、走破時計面でも裏付けることになった。確かに芝コンディションは素晴らしく、使用されて芝が傷むのは馬場造園担当者でなくともつらくなるほど美しく整えられていたが、「前半1000m通過60.6秒…」は明らかにスロー。決して全体の走破時計が速くなる流れでもなかったから、この時計は数字以上に中身が濃い。

 サンテミリオンは早めに順位を上げ、3コーナー手前からもう2番手。逃げて粘るアグネスワルツをかわすのにかなり手を焼いたが、これは5か月ぶりで粘ったアグネスワルツの能力が素晴らしいため。上がり3Fをすべて「11秒台」の34.8秒でまとめ、ゴール100m手前でかわし1馬身の差をつけたあとは楽。着差以上の完勝だった。桜花賞本番でみんな馬体重が減り、結果、凡走に終わった「ゼンノロブロイ産駒」のイメージが残っているせいか、もっと余裕のある体つきが望ましかった(これでデビュー以来4戦連続して馬体重減)ようにも思えるが、初の東京コースで自在の先行策を見せ、好タイムで乗り切った自身は大きい。俄然、本番が楽しみになった。桜花賞上位グループには、例年以上にマイルこそベスト型が多い。その点でも強気になれる。トライアルを制し4戦3勝で東京2400mの本番を迎えるのは父ゼンノロブロイ(日本ダービー2着)と同じ。古賀慎調教師は藤沢和厩舎に所属していたから、当時のゼンノロブロイの成長過程を知っている。

 アグネスワルツ(同じゼンノロブロイ産駒で、同じ社台F生産)は、京都の1600mを快時計で逃げ切って2連勝したあと、5か月ぶり。初の長距離があって、初の東京、それも2000m。寸前サンテミリオンに屈しはしたが、自分で主導権を握りレースを作って2分00秒4。必ずしも距離2400m歓迎とはいえない牝系だが、それは大半の馬が同じ。桜花賞からして「47.5-45.8秒」のスロー。まして最近のオークスが厳しい流れになることなどまずありえない。逃げ切って台頭の候補ならマークもきついが、今回は捕まって2着は逆に好材料。十分にオークス候補に浮上したと考えたい。

 ブルーミングアレーは、注文をつけて最後方から突っ込んできたアマファソンに詰め寄られ、かわされそうになってヒヤヒヤの3着。マークしていたサンテミリオンに引き離された印象は良くないが、今回の最大テーマは3着以内の出走権確保。もう少し控えて行きたい脚質だが、今回は敢えて先行策を取った一面もある。早くも陣営は本番では逆転の大駆け狙いの「待機策」をにおわせている。

 アマファソンはうまく末の良さを出し切って3着…と思えた瞬間もあったが、この流れで最後方からだけに、寸前で伸びが鈍った。上がり34.1秒でも届かない形になったから、これは仕方なしだろう。もっと早く動けば…というタイプでもない。

 2着ならありえると期待したディミータは先行馬の直後でこれ以上はない形になったが、追い比べで脱落。まだ全体にパワー不足だった。阪神JFを小差3着のベストクルーズは、「苦しいところに入ってしまった…田中勝春騎手」。確かに直線は狭くなりブレーキを踏む不利があったが、早くから完成度の高いスピードタイプでもあり、あまりオークス向きではない。そんな印象の負け方だった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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