競輪
天皇賞・春
- 2010年05月03日(月) 23時59分
組み合わせからみて、かなりスローな流れになる公算大と予測された。外枠から迷うことなく先行策を取ったマイネルキッツ(松岡騎手)は、流れを想定し、結果は2着にとどまったものの今年の流れを読み切った完ぺきに近い内容。GI馬らしい絶妙の対応だった。レース全体のバランスは前後半の1600mに2分すると『1分38秒3＝1分37秒4』。一見、とくにスローとされるバランスでもないが、近年の高速化を呼ぶ芝コンディションの格段の変化により、前4年のレース前後半がすべて「1分38秒未満＝1分38秒未満」に収まっていたことを考えると、見た目以上に楽な流れだったのである。
ペースを作ったミッキーペトラ(池添騎手)は出走に至った経緯もあり、あまりペースを落とす先導は避けたかった。ある程度はGI天皇賞・春にふさわしい流れを演出しなければならない立場となり、前半1000m「60.7秒」から、前出の1600m通過「1分38秒3」は、この馬とすれば懸命の、かつ必死の先導だった。結果は問うまい。
事実上の主導権を握ることにも成功したマイネルキッツは、最後の直線を迎える地点で早くも先頭に立ち、一時は4〜5馬身のリード。確勝かと見えた。中盤のラップが落ちたため、後半の800mからは「11.8−11.3−11.4−11.5」＝46.0−34.2秒。坂を下って平坦の最後は、京都特有の高速フィニッシュ。
絶妙の位置取りから、当然のようにスパートした前年の勝ち馬マイネルキッツは、自身の上がり3F「34.2秒」。3着以下には5馬身もの決定的な差をつけている。このペースではこれ以上はないと思える3分15秒8で走破してみせた。残念ながら連覇を逃した陣営だが、少しの落胆もない。早くも秋の目標に海外GI挑戦を匂わせている(長距離のメルボルンCか？)。確かに負けたことは残念だが、中身には十分納得であり、マイネルキッツには最後を33秒台でまとめるような本質スピード型の色彩は薄い。優れた長距離適性を改めて示すことに成功した自信の表明である。
奇しくもC.ウィリアムズ騎手が、自国最大のイベントであるメルボルンC挑戦に「大きな可能性があると思える」と絶賛したジャガーメイル(父ジャングルポケット)。前年の勝ち馬マイネルキッツの好内容を尺度にするほどに、素晴らしい勝ち方だった。さまざまな騎手が乗ってもあと一歩が足りなかった馬だが、今回は完成の域に達した馬体を自信に、陣営、一分の隙もない究極の仕上げだった。最初「なぜウィリアムズ騎手なのか？」とずっと疑問に思うところもあったが、道中7〜8番手につけ微動だにせずの自信にあふれる騎乗姿勢をみているうちに、素晴らしい騎手であることが理解できた。まるで京都3200mの天皇賞を知り尽くしていたかのように、動くべきではない場所では無駄な動き微塵もなし。スパート地点も仕掛けのタイミングも、まるで相手の力量、特徴までインプットされていたかのようだった。ただ1頭だけ、上がり3F「33秒台」。必ずしもスタミナ系とは言い切れないジャガーメイルに、デキの良さ、流れ、馬場、相手の位置取りなどすべてのプラス要素が重なっての完勝には違いないが、中でもC.ウィリアムズ騎手の果たした役割は大きい。
厳しい減量(土曜には54�圓任盖馨�)の跡をうかがわせる顔つきは、決して多くのファン受けするイケメンではないかもしれないが、この男はすごい。レース後のコメントまで素晴らしい。京都のファン、ウィリアムズ騎手にうながされ盛り上がりを鼓舞されるまで、勝ち馬に対する賞賛の拍手が少なかったようにみえた。
人気のフォゲッタブルは、頭角を現した昨年の夏以降、秋に「菊花賞→ステイヤーズS→有馬記念」。そしてすぐ「ダイヤモンドS」。トップクラスに昇格することに成功したが、さすがに厳しい日程だった。陣営も認めるように疲れが出ていた。仕上げに苦心し、阪神大賞典をパスしてここは2か月半ぶり。池江泰郎調教師にとって最後の天皇賞・春出走、エアグルーヴ産駒、スターホース不在…などの要因も重なって期待は高まったが、道中ジャガーメイルと同じ無理のない位置にいながら最後は約10馬身差の完敗。仕上がってはいたが、残念ながら体調万全の「好調期」までには至らなかった。
後ろを見ながら、途中でなんとなく動かざるをえないような位置にいた伏兵中の伏兵16番人気のメイショウドンタクが、そのまま粘り込んでマイネルキッツから5馬身差3着。後方のインで、つまずいてよれたトーセンクラウン(半ばアクシデント)の斜行の影響を受けた馬は確かに残念だったが、あそこで、あの時点であの位置にいては、たとえ不利がなくとも着順はさして変わらなかったかもしれない。
勝ち馬と、2着馬の好内容、3着馬の快走は光ったが、以下は「あまりレベルは高くない」とされたレース前の風評に、残念ながら反発できなかった。
ペースを作ったミッキーペトラ(池添騎手)は出走に至った経緯もあり、あまりペースを落とす先導は避けたかった。ある程度はGI天皇賞・春にふさわしい流れを演出しなければならない立場となり、前半1000m「60.7秒」から、前出の1600m通過「1分38秒3」は、この馬とすれば懸命の、かつ必死の先導だった。結果は問うまい。
事実上の主導権を握ることにも成功したマイネルキッツは、最後の直線を迎える地点で早くも先頭に立ち、一時は4〜5馬身のリード。確勝かと見えた。中盤のラップが落ちたため、後半の800mからは「11.8−11.3−11.4−11.5」＝46.0−34.2秒。坂を下って平坦の最後は、京都特有の高速フィニッシュ。
絶妙の位置取りから、当然のようにスパートした前年の勝ち馬マイネルキッツは、自身の上がり3F「34.2秒」。3着以下には5馬身もの決定的な差をつけている。このペースではこれ以上はないと思える3分15秒8で走破してみせた。残念ながら連覇を逃した陣営だが、少しの落胆もない。早くも秋の目標に海外GI挑戦を匂わせている(長距離のメルボルンCか？)。確かに負けたことは残念だが、中身には十分納得であり、マイネルキッツには最後を33秒台でまとめるような本質スピード型の色彩は薄い。優れた長距離適性を改めて示すことに成功した自信の表明である。
奇しくもC.ウィリアムズ騎手が、自国最大のイベントであるメルボルンC挑戦に「大きな可能性があると思える」と絶賛したジャガーメイル(父ジャングルポケット)。前年の勝ち馬マイネルキッツの好内容を尺度にするほどに、素晴らしい勝ち方だった。さまざまな騎手が乗ってもあと一歩が足りなかった馬だが、今回は完成の域に達した馬体を自信に、陣営、一分の隙もない究極の仕上げだった。最初「なぜウィリアムズ騎手なのか？」とずっと疑問に思うところもあったが、道中7〜8番手につけ微動だにせずの自信にあふれる騎乗姿勢をみているうちに、素晴らしい騎手であることが理解できた。まるで京都3200mの天皇賞を知り尽くしていたかのように、動くべきではない場所では無駄な動き微塵もなし。スパート地点も仕掛けのタイミングも、まるで相手の力量、特徴までインプットされていたかのようだった。ただ1頭だけ、上がり3F「33秒台」。必ずしもスタミナ系とは言い切れないジャガーメイルに、デキの良さ、流れ、馬場、相手の位置取りなどすべてのプラス要素が重なっての完勝には違いないが、中でもC.ウィリアムズ騎手の果たした役割は大きい。
厳しい減量(土曜には54�圓任盖馨�)の跡をうかがわせる顔つきは、決して多くのファン受けするイケメンではないかもしれないが、この男はすごい。レース後のコメントまで素晴らしい。京都のファン、ウィリアムズ騎手にうながされ盛り上がりを鼓舞されるまで、勝ち馬に対する賞賛の拍手が少なかったようにみえた。
人気のフォゲッタブルは、頭角を現した昨年の夏以降、秋に「菊花賞→ステイヤーズS→有馬記念」。そしてすぐ「ダイヤモンドS」。トップクラスに昇格することに成功したが、さすがに厳しい日程だった。陣営も認めるように疲れが出ていた。仕上げに苦心し、阪神大賞典をパスしてここは2か月半ぶり。池江泰郎調教師にとって最後の天皇賞・春出走、エアグルーヴ産駒、スターホース不在…などの要因も重なって期待は高まったが、道中ジャガーメイルと同じ無理のない位置にいながら最後は約10馬身差の完敗。仕上がってはいたが、残念ながら体調万全の「好調期」までには至らなかった。
後ろを見ながら、途中でなんとなく動かざるをえないような位置にいた伏兵中の伏兵16番人気のメイショウドンタクが、そのまま粘り込んでマイネルキッツから5馬身差3着。後方のインで、つまずいてよれたトーセンクラウン(半ばアクシデント)の斜行の影響を受けた馬は確かに残念だったが、あそこで、あの時点であの位置にいては、たとえ不利がなくとも着順はさして変わらなかったかもしれない。
勝ち馬と、2着馬の好内容、3着馬の快走は光ったが、以下は「あまりレベルは高くない」とされたレース前の風評に、残念ながら反発できなかった。
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。
