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掘り出し物の時代

  • 2011年04月15日(金) 12時00分
 日本のサラブレッド産業は規模が小さい。しかも内需型だから、サンデーの血がたまっていく一方だ。このだぶつきが値崩れを引き起こし、本来ならばベンツ級の後継種牡馬が、ステイゴールドのように大衆車と変わらぬ扱いを受けている。

 そこに新たにディープインパクトという、サンデーの超最高級車が参入してきた。結果、他のサンデー系種牡馬の産駒の値崩れに、ますます拍車がかかることになった。

 しかし、本来はどれもベンツ級だから、産駒の値段が安くても、性能じたいはさほど変わらない。大衆車だと思っていた馬が、意外に性能が良かったりする。

 そんな現象がこのところ顕著になっている。つまり、今は「掘り出し物の時代」なのだ。おかげで、金に糸目をつけずに評判馬を買い漁ってきた人たちは、非常にかわいそうな目に遭っている。

 先週の桜花賞は、ディープインパクト産駒のマルセリーナが快勝した。だが、セレクトセールで高額で落札された産駒は、ほとんどが期待を裏切っている。

 今後もこの裏切りが続けば、お金に糸目をつけない人たちの投資意欲を、さらに減退させることになるだろう。この点においても今の日本は、サンデー系のさらなる発展を期待するうえで、最適な環境とは言えない。

 対照的に欧米には、サンデー系と相性のいいミスタープロスペクター系、ノーザンダンサー系、その他の有力父系の血が入った「肥沃な畑」が広く分布している。

 しかも、これらの畑は連作障害に悩み、「別の種類の種」を必要とし始めている。サンデーの血を生かす最適な環境は、欧米にこそあるといっていい。

 ドバイワールドCで実績を出したネオユニヴァースは、血統的にいかにも欧州向き。このまま日本に置いて、飼い殺しにするのもったいない気がする。シンジケートなどの問題もあるだるが、交換リースなどで、欧州にチャレンジさせてみるべきではないだろうか。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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