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「欧州仕様」に秘訣あり

  • 2011年05月06日(金) 12時00分
 サンデーの初期の大物は、スタミナ、パワー、成長力に不満が残るものが多かった。しかし中期以降の大物は、万能性に富み、成長力が備わったものに様変わりした。これは配合牝馬の変化が大きく影響している。

 中期以降は、欧州育ちのステイヤー色の強い繁殖牝馬、あるいは母の父にステイヤー血統の入った繁殖牝馬に、重きがスライドしていったのだ。

 サンデーが中期から尻上がりに種牡馬成績を伸ばし、初期とはまるで違う万能タイプを多く出したのは、この欧州育ちのヘビーな血統と好相性を示したことが大きい。

 最高傑作のディープインパクト(三冠馬)、名ステイヤーとして大成したマンハッタンカフェ(菊花賞)、力のいる荒れた馬場、重馬場を得意としていたネオユニヴァース(日本ダービー)。これらはみな母系にスタミナ、パワー、成長力に優れた欧州血脈を従えていたことで共通する。

 たしかにサンデーは仕上がりの早さ、スピード、瞬発力が売りだった。しかし本当のところは、欧州血脈のスタミナ、パワー、成長力を巧みに取り込むことで、万能の大物を出したのである。

 社台グループはその相性をいち早く見抜き、海外からの繁殖牝馬を導入するにあたり、重きを欧州のステイヤー牝馬に切りかえていった。

 面白いことに、これら中期以降の大物後継種牡馬は、父系はサンデー系であっても、資質は「欧州仕様」になっている。しかも、サンデーと同じで、その持ち味を引き出すには、欧州牝馬との配合がベターの傾向が出ている。

 つまり、中期以降の後継種牡馬たちの成功もまた、仕上がりの早さとスピードを追求した配合が呼び込んだものではない。春の天皇賞を勝ったヒルノダムールが、そのいい例ではないだろうか。母の父ラムタラ(英ダービー)はヘビーな欧州血脈である。

 これまでマンハッタンカフェらしい産駒が少なかったのは、ライトなアメリカ血統との配合が多かったせいでもあるだろう。マンハッタンカフェには、やはり似たもの同士の配合が合っている。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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