スマートフォン版へ

20年前の熱い思いが、オークスで結実

  • 2011年05月20日(金) 12時00分
 ホエールキャプチャの曾祖母タレンティドガールは、今から24年前、3歳になったばかりの正月明けにデビュー。未勝利を勝ち上がったのは3戦目で、2月半ばのことだった。

 このため桜花賞は間に合わなかったが、格下の身(11番人気)で出たオークスで3着に好走。その秋、エリザベス女王杯(当時は2400m)に出走し、“牝馬三冠”を目指すマックスビューティを退けて、戴冠のゴールを駆け抜けた。

 父のリマンドはステイヤー血統で、代表産駒にオペックホース(ダービー)、テンモン(オークス)、アグネスレディー(オークス)がいた。後年、母の父としてもメジロマックイーン(菊花賞、天皇賞・春)を出している。

 また、タレンティドガールの半兄ニッポーテイオーは、2週前の天皇賞・秋を勝ったばかり。兄妹による連続GI制覇のおまけ付きだった。「ステイヤー血統の父と、名牝系の底力」に、長距離大レースにおける血の重要性を、思い知らされたものである。

 4年後の1991年、生産牧場で馬主でもあった千代田牧場は、タレンティドガールを欧州に送り込んだ。時の名馬ナシュワン(英ダービー)を付け、「スタミナ、成長力に富む世界レベルの名牝系に押し上げたい」という夢からだった。

 生まれたエミネントガールの繁殖成績は、期待に応えてくれるものではなかったが、孫の代になってホエールキャプチャが誕生。あの20年前の熱い思いが、やっと実を結び始めた。

 確かに父のクロフネは、スタミナ、成長力、クラシックの底力に不安がある。しかし、母系にはリマンド、ナシュワンと2代続けて欧州のステイヤー血統が流れ、さらにそこにサンデーが注入されている。2400mのスタミナに問題はないだろう。

「20年前の熱い思いが、オークスで結実」

たまには、そんな血のドラマを見てみたい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング