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盛り上がりに欠けたセレクトセール

  • 2011年07月15日(金) 12時00分
 セレクトセールの名簿を見る限りでは、今年はそれほどの目玉商品は揃っていなかったように思う。

 確かにディープインパクト×名牝エアグルーヴの牝、ネオユニヴァース×名牝ウインドインハーヘアの牡(ディープインパクトの弟)といった血統馬は出ていた。しかし、それらを何頭か散りばめた程度で、全体に魅力に乏しいというのが第一印象だった。

 景気の低迷で、個人馬主の購買力は急激に落ちている。ならばと、主力の多くを共有クラブのほうに回したのかもしれない。

 それに、サンデーサイレンスで名を上げた名牝たちも、かなり高齢になって投資的な価値は薄れている。

 だが、ディープインパクト×名牝エアグルーヴの牝には3億6000万円、ネオユニヴァース×ウインドインハーヘアの牡には、2億5000万円の値がついた。どちらも、母となって優秀な繁殖成績を残してきたが、年齢的にはすでに危険水域に達している。

 購入者はどちらも、どうやら例のトゥザヴィクトリーの牝馬を、6億円で競り落としたグループらしい。個人的に知らない人たちではないので、深い言及は避けるが、2頭以外の馬はそれだけ魅力がなかったことの証明でもあるだろう。

 単にお祭り騒ぎを演出したかったのか、それとも、これで社台グループに深く食い込もうとしているのか。一方でクラブ馬主も経営している人たちだから、そのあたりのことも見え隠れする。

 高額取引馬の多くは、ディープインパクト産駒に集中したが、エース級の繁殖牝馬の多くを相手にしているのだから、当たり前かもしれない。しかし、数年前のような1億円の大台を突破する馬は、めっきり減った。

 私も2日間にわたってセレクトセールを見届けた。だが、盛り上がりに欠けた印象は否めない。深刻な不況が、馬産地を容赦なく襲い始めている。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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