セレクトセールの名簿を見る限りでは、今年はそれほどの目玉商品は揃っていなかったように思う。
確かにディープインパクト×名牝エアグルーヴの牝、ネオユニヴァース×名牝ウインドインハーヘアの牡(ディープインパクトの弟)といった血統馬は出ていた。しかし、それらを何頭か散りばめた程度で、全体に魅力に乏しいというのが第一印象だった。
景気の低迷で、個人馬主の購買力は急激に落ちている。ならばと、主力の多くを共有クラブのほうに回したのかもしれない。
それに、サンデーサイレンスで名を上げた名牝たちも、かなり高齢になって投資的な価値は薄れている。
だが、ディープインパクト×名牝エアグルーヴの牝には3億6000万円、ネオユニヴァース×ウインドインハーヘアの牡には、2億5000万円の値がついた。どちらも、母となって優秀な繁殖成績を残してきたが、年齢的にはすでに危険水域に達している。
購入者はどちらも、どうやら例のトゥザヴィクトリーの牝馬を、6億円で競り落としたグループらしい。個人的に知らない人たちではないので、深い言及は避けるが、2頭以外の馬はそれだけ魅力がなかったことの証明でもあるだろう。
単にお祭り騒ぎを演出したかったのか、それとも、これで社台グループに深く食い込もうとしているのか。一方でクラブ馬主も経営している人たちだから、そのあたりのことも見え隠れする。
高額取引馬の多くは、ディープインパクト産駒に集中したが、エース級の繁殖牝馬の多くを相手にしているのだから、当たり前かもしれない。しかし、数年前のような1億円の大台を突破する馬は、めっきり減った。
私も2日間にわたってセレクトセールを見届けた。だが、盛り上がりに欠けた印象は否めない。深刻な不況が、馬産地を容赦なく襲い始めている。