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移籍馬の活躍

  • 2011年07月29日(金) 18時00分
 グランダム・ジャパン古馬シーズンの第2戦として7月19日に行われた金沢・読売レディス杯は、単勝元返しの断然人気となった笠松のエーシンクールディが楽勝。今年1月には根岸Sで4着に入るなど、さすがに中央オープンの格の違いを見せつけるレースぶりだった。

 エーシンクールディの次走には、同古馬シーズン第4戦の園田・兵庫サマークイーン賞が予定されている。よほどの有力馬の参戦でもない限り、エーシンクールディの中心にゆるぎはなさそうだ。そしてとりあえずの最終目標は、同最終戦の大井・レディスプレリュードになるという。

 南関東の牝馬のトップホースには、エーシンクールディに対抗できる実力馬もいるが、南関東所属馬がグランダム・ジャパンを狙って積極的に遠征するようなことはあまり考えられない。それゆえ、エーシンクールディが古馬シーズン総合優勝にもっとも近いところにいるといってよさそうだ。

 このエーシンクールディの活躍に対して、個人的に複数の方から同じような意見を求められた。エーシンクールディは、読売レディス杯が中央からの転入2戦目。まるでグランダム・ジャパンのタイトルを獲るために中央から移籍させたようなもので、ずっと地方に在籍して盛り上げている馬の立場がないのでは、ということだ。

 ただぼくはこのエーシンクールディのような馬に対して、あまり否定的ではない。

 かつてのように地方競馬が地区ごとに完結していた時代とは違い、今は地方競馬の中でも、そして地方・中央の間でも交流がかなり進んだ。それゆえ、馬のレベルにおける地区ごとの序列もかなりはっきりしてきて、同時に、それぞれの地区が果たす役割もはっきりしてきた。わかりやすい例では、ホッカイドウ競馬では多くの2歳馬がデビューするが、そのトップクラスのほとんどが、2歳シーズン終了とともに、中央や南関東に移籍してしまうということがある。

 南関東以外の地方競馬は、以前から中央や南関東からの移籍馬によって成り立っている部分があったが、地区によってはデビューする2歳馬が極端に少なくなっている現状を考えると、ますます転入馬に頼らざるをえない。

 また、出走手当で預託料の大部分がまかなえたかつてと違い、今では賞金や手当がギリギリまで下がった競馬場も少なくない。そうした状況で調教師や馬主が競馬の世界で生き残っていこうと思えば、勝てる可能性のある馬を持ちたいと思うのも当然のことだろう。むしろそうした向上心のある厩舎関係者がいなければ、その地区全体のレベルが低下してしまう。

 たしかに地方競馬はその名のとおり、競馬場ごと、地区ごとのさまざまな特色が存在意義のひとつではあるとは思う。しかし今地方競馬で最優先に考えなければならないのは、競馬を続けること。生き残ろうとする反対側には脱落という立場も存在するだけに、難しい問題だが、少しでも上へと目指す姿勢は悪いことではないと思う。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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